第六章・その4

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「いや、心配しました。まさか、エルザがゲインさんについていくなんて」


「あのときは俺も驚きましたよ」


 三日後、木の上にいるエルザを保護し、都まで行った俺は、あらためてミーザやセイジュと会食をしていた。


 あのあと、ドラゴンが出没したという話は聞いていない。とりあえず、あの街の面子は静かにしているようだった。


「それにしても、エルザ、俺の真似してドラゴンに乗るなんて、ああいうおてんばはよくないぞ。君のことを守れなくなるところだった」


「うん、ごめんなさい。でも私、ゲインのことが気になって」


「俺なんて、ただの冒険者だ。気にする必要なんかない」


 食事は無事に終了した。


「あ、それから、あの街から、アンソニーってエルフがくるかもしれません。魔王の死体を調べて、不老不死になる研究をするために」


 最後に言ったら、ミーザが眉をひそめた。


「それって、エルザをさらったエルフたちのことでは?」


「そうですよ。まあ、俺が紹介するって約束しちゃったもんで。だから紹介はしました。協力するか、追い帰すかはそっちで決めてください。じゃ、俺はもう行きますから」


 俺は立ちあがった。それにしても、タイミングがよかったんだかなんだか。久しぶりにアーバンの娘の顔を身にきたら、エルザがさらわれて、俺の出番か。


「じゃあな、エルザ。お父さん、お母さんと仲良くな」


 エルザに言い、俺は店をでた。うまい食事だったが、やっぱり、お上品な店は量が少なめだな。宿に戻ったら、追加で何か食っておくか。


「あ! ゲイン、帰ってきたのか!!」


 宿に行ったら、この前知り合ったザルトが、慌てた顔で声をかけてきた。


「おまえ、あの後、大丈夫だったのか?」


「大丈夫じゃなかったら、いまごろ自分の足で歩いてないだろう」


「そりゃ、そうだけど。でも、ドラゴンがきたんだぞ? どうやって逃げだしてきたんだ?」


「逃げだしてなんかない。力まかせに締めあげて眠らせてきたんだ」


「は? なんだそれ。笑えない冗談だな」


「笑い飛ばしてくれよ」


「まあ、おまえが無事に帰ってきたってことについては、笑顔で歓迎してやるよ。それで、何か食うか?」


 テーブル席についた俺に、ザルトがついてきて、妙なことを言ってきた。


「なんだ? ただでご馳走してくれるのか?」


「ただじゃねえ。飯を食わせてやる代わりに、頼みがある。俺と組んでくれ」


「その話か。断るよ。俺は今日、ここに泊まって、明日には都をでる」


「そうか、残念だな」


 ザルトが俺を見ながら苦笑した。


「それにしても、ドラゴンとからんで、手も足もついた状態で帰ってくるとはな。おまえ、本当に魔王を倒した六英雄の、獣王ゲインの子孫じゃないのか?」


「言っただろう。違うって」


「そうか。まあいいや。とりあえず今日は飲もう」


 俺がいいとも悪いとも言ってないのに、ザルトが俺の真向かいに座った。そのままカウンターのほうをむく。


「おーい、蒸留酒の強いの頼む!! あと肉だ!!」


 その日は、少しばかり羽目を外した酒盛りになった。

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