終.旅立ちの朝
快晴の空と、耳をくすぐる草の香混じりの風。
旅立ちの朝にふさわしい晴れ渡った空が自分への祝福に思えて、我知らず耳としっぽがぴんと立つ。
「お父さん、お母さん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、ルティリス」
「気をつけて。時々は、顔を見せに来てね」
頼りがいのある父と優しい母。大好きな二人に思いっきり手を振り、ルティリスはオレンジの両眼を家の門口へ向けた。
長身の人影が二つ、それより小柄な影が一つ。
「お待たせしましたっ、ロッシェさん。お世話になります、ルベルちゃん、セロアさん」
「こちらこそ、よろしくです!」
「忘れ物はありませんか? ルティさん」
呼称通りに先生みたいなことを聞いてくる学者風の
その隣、瞳の大きなツインテールの少女はルベル。楽しげな表情でルティリスを見上げている。
「どうぞ、娘をよろしくお願いします。なにせ箱入りなので、迷惑を掛けるかもしれませんが……」
玄関から出て来た父がそう言って、セロアとルベルの後方に立つロッシェを見る。
彼は穏やかな笑みで数歩進み出、ユイスに手を差し出した。
「承りました。娘さんにとって楽しい旅になるよう、僕もできるだけのことをさせていただきます」
「ありがとう。お任せしましたよ」
ロッシェの手を取って握手を交わし、ユイスはそれだけ言ってにこりと笑う。
リトが絡んだあの一件の後、ルティリスは父と村へ帰り、母や友人たちと一週間ぶりの再会を喜んだ。当然父には幾らかお説教ももらったが、両親はルティリスの頑張りを認め、短い旅が娘を成長させたとも言ってくれたのだった。
ルティリス自身も、家に戻って落ち着いてから経験した出来事を思い出し、反省も含めていろいろ考えた。
怖いこと、辛いことも沢山あったけれど、出会いもあったし感動も経験した。村にいたのでは気づけなかった様々な実感は、両親への感謝を深めてもくれた。
だから今度は、巻き込まれではなく自分の意志で旅に出たいと思ったのだ。
そのことを両親に相談すると、二人は心配しつつも、信頼の置ける相手と一緒ならばという条件の下に村を出ることを許してくれた。
もっとも、一緒に旅をできるほど親しく信頼できる相手、などそんなに心当たりがあるわけではない。
村の年長者の誰かという線も考えたのだが、なかなか候補が浮かばなかった。そんな時、ユイスがロッシェはどうかと提案してくれたのだ。
三人は、ルティリスの同行を
「セロアさん、旅の準備はばっちりです! 任せてくださいっ」
両手の拳を握って答えたら、セロアは楽しげに笑ってうなずいてくれた。ロッシェが父と最後の挨拶を交わし、それから三人の方へ来てにこりと笑う。
「じゃあ、出発しようか」
「はい!」
先の旅で、ルティリスはずっとロッシェに守られるばかりだった。
それが彼にどれだけの負担を強いていたのかを、全部とは言わないが今は少しだけ解ってきた気がする。
だから今度の旅では、守られるだけでなく仲間を助けられる自分になりたい、というのが、ルティリスの密かな目標だった。
世界は広く自分はまだまだ子どもだけれど。
まだ見ぬ土地、これから出会うであろう人々に思いをはせて、ルティリスはもう一度振り返り両親に大きく手を振る。
この先に
END & Let's Go next QUEST!
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