とある施設職員の話
水谷一志
第1話 とある施設職員の話
一
…この施設では、実に様々なことが起こる。
例えば…、この施設の防犯カメラが壊されたのは、ほんの1週間前のことだ。
「あれ…?」
それは夜のこと。たまたまその時間勤務していた私はすぐに防犯カメラの異常に気づく。
『これはただの故障か…?』
そう思いながら該当の防犯カメラの所へ行った私はあることに気づく。
そう、その防犯カメラの後ろについていたコードが、何者かによって切断されていたのだ。
『これは…誰の仕業だ?』
もちろんこれは事件に当たるので場合によっては被害届を出さないといけない。…まずは警察に電話を…、と思った時、私はふとある可能性に思い当たる。
『これは、もしかして…。』
二
その夜が明けた翌朝、私は早速出勤してきた施設長に防犯カメラの一件を報告し、その「可能性」も伝えた。
「おそらくそうやろな。ちょっと訊いてみてくれへんか?」
私は自分の意見に対する施設長の了承を得る。
そして…。
「○○さん、防犯カメラのコード、切りましたね?」
「はい、僕がやりました。
僕、この施設、辞めたいねん。辞めたいねん!」
…やっぱりそうだったか。
「でもこんなことしてはいけませんよ。」
「はい、すいません!すいません!」
そう、この事件は私の勤める施設の「利用者」が起こしたこと。
もちろんこの件は事件にはならない。
なぜならそう、私は「知的障がい者」の入所型施設に勤めているのだ。
三
「また帰還命令か…。」
私のデバイスに、1通のメッセージが送られてくる。
そう、それは私の故郷の「惑星」にいる本来の職のチーフからのメッセージ。
本来の私の職は、この「地球」という私の住む惑星とは別の惑星の実態を調査すること。
…まあ言ってみれば「スパイ」ということになるだろうか。
ちなみにこれは私の惑星の「国家プロジェクト」ではない。つまり私は、【プライベート・エージェント】、【施設職員】なのである。
…うん?
[言語エラーです。表記方法にぶれがあります。正しくは【私設職員】です。]
…この惑星の「ニホンゴ」という言語は、共通語である「エイゴ」より格段に難しい…特に「カンジ」の表記が。
「Oh,shit…!」 (終)
とある施設職員の話 水谷一志 @baker_km
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