なんにょ

 うちの家族、早口言葉はもれなく噛みます。

 もともと早口で喋らないですから……という言い訳はさておき。


 早口言葉でなくても、妙に言いにくい言葉ってあるんですよね。



 ある時、母様とテレビを見ていたら『ミルクセーキ』が出てきました。

 長崎では氷菓子として出されるんですね。


「まぁ。冷たくて、美味しいでしょうね」


 母様が、にっこり笑いました。


「そうですね。老若男女、笑顔ですもんね」


 私は無意識に口にしてしまいましたが。

 〝老若男女〟という言葉との相性が良くないみたいなんですよね。

 2回目以降が特に。


 それを知っている母様がすかさず、


「まるちゃん、まるちゃん。もう一回言って♪」


 楽しそうに、まぁ。

 可愛いですわねっ。


「えぇと……はい。……では、まいります」


 私は改めて言おうとして、ちょっと身構えてしまいました。


「ろう……老若にゃん……にゃんにょ……」

「うふふ。猫さんみたい」

「……そうですね」


 意識すると、余計に言えなくなりますのでねっ。


「まるちゃん。もう一回♪」

「……老若にゃ……なん……男女」

「途中で切ったらダメじゃないの (≧▽≦)✨」

「そんなイイお顔で言われても」


 なんで言えないんでしょうね。


「もう一回よ♪」

「うあいっ。……老にゃくにゃ、ん……にょ」


 返事に勢いをつけても、やっぱり言えませんでした。


「『にゃんにゃん』言ってるまるちゃんが可愛くて、つい言わせたくなっちゃうわね♪」

「にゅうぅぅ~! もう、いっそのこと〝老若にゃんにゃん〟で良いんじゃないですかねっ」


 やさぐれモードになる私。


「それだと、みんな猫さんになるわよ?」

「可愛く正論を言うのは、やめてください

(  ̄3 ̄)」


 いくら可愛くても、やめてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る