かわいそうな……?

 発端が何のお話だったか、さっぱり思い出せないんですが……


「母様」

「なぁに?」

「それはさすがに、私がかわいそうだと思いませんか」


 ちょっとだけ、ぷんすかしたんです。

 めったにないことなんですけどね。

 ただ、相手はやっぱり母様なので――


「まるちゃんが、カワウソ?」


 カ……カワウソ?


 カワウソって、どんなのでしたっけ?

 急に言われても……


 大喜利をしているわけではないんですが、何かこう、返さないといけない気になります。


 この時点で〝かわいそう〟は旅に出ていました。


 カワウソ……?

 カワウソ……


「……〝カワウソ〟?」


 それらしきポーズを取ってみたんですが。


「それ、ミーアキャットよ」

「……えー…… (´д`|||)」


 ポーズの意味……

 そして、考えた時間……


 〝かわいそう〟が、帰ってきた気がします。

 そのまま、旅に出てくれて良かったんですけどね。


「カワウソはね……こうよ」


 母様が、テーブルの縁に何かを置いていくジェスチャーをします。


「それ、カワウソですか?」


 そのジェスチャーとカワウソに、どういう関係が?


「『かわうそ魚を祭る』でしょ」

「……七十二候とか、普段は考えませんから……」


 脱力しました。

 二十四節気くらいですよ。カレンダーを見ても。


 2月19日頃は、二十四節気だと『雨水』

 七十二候だと『うお 氷に上ぼる』『獺 魚を祭る』


 春になって漁を始めたカワウソが、捕った魚を川岸に並べることから来ているそうです。


 そして冒頭の聞き間違いは、そろそろそんな季節ね、とか考えていたらしいです。




 母様へ

 ちょっと賢いことを考えつつ、天然を発揮するのは、やめてください。

 脱力感がなかなか戻らなくて困る娘より

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