冬の木に咲く花

 立春が過ぎましたが、ストーブへの愛しさは続きますね。

 というわけで、冬の日のお話です。



 ある日。外から入ってきた父が、母様に伝えました。


「木に花が咲いてるぞ」


 花?

 このあたりに、冬に咲くお花なんてありましたっけ?


「あら。どれくらい?」


 母様は知っているようです。


「10……くらいか」


 10?


「15かもしれないな」


 15?


 そんな少ない数で咲くお花って……


「まぁ。なら明日は雪かきね」

「え?」


 いや、すみません。

 思わず、口から出ました。


 なんで通じてるんですか?

 私にはわからないんですけど。


「あの……」

「なぁに? まるちゃん」


 母様が可愛らしく小首を傾げます。


「さっきから、なんのお話をしてるんですかね?」

「明日は雪かきねって」

「それは聞きました」


 えぇと……


「『木に咲いてた』って、なんのお花ですか?」


 私の問いかけに、ふたりは顔を見合わせて、ふふっと笑いました。


「雪がね。木に積もってたよって」

「10cmか、15cmか……」

「……いや、わかりませんて」


 まったくわからなかったですよ。

 夫婦の神秘ですか?

 それとも、私の発想力が足りないんですか?


「昔ね、お父さんとこういう会話をしたの」


 微笑む母様の可愛らしいこと。

 父がいまだにべた惚れなのも、わかります。


 ……なるほど。

 ふたりの想い出ですか。

 昔から、こんな会話をしてたんですね。



 ストーブの前で、お白湯を飲みながら和ませていただきました。

 ありがとうございます。

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