わんわんわん

 1月11日。

 世間では、鏡開きのお話が多かったですね。

 我が家では、1が並んだゾロ目の日ということでも盛り上がりました。



「母様。今日は1月11日ですよ」

「あら『わんわんわん』ね♪」

「わんこがいっぱい出てくる感じですかね」

「ね♪」


 子犬がコロコロと戯れているのを想像して、癒されつつ。

 何となく得した気分というか、ちょっと良いことがありそうですよね、という会話からしばらくして。


 妹が、愛しの甥っ子たちを連れてきてくれました。

 お買い物の帰りに寄ってみたそうです。

 早速、良いことが……!


 みんなで午後のおやつタイムです。

 うふふふ。ちみたん甥っ子兄の愛称の隣をゲットしました♪

 反対隣には、母様が。

 むーちゃん甥っ子弟の愛称は乳児なので、向かいの席で妹が抱っこしています。


「ちみたん。今日はね『わんわんわん』の日なんだよ」

「ちょっと、まるちゃん。ちみに妙なこと教えないで」


 妹に怒られましたが、ちみたんの隣でテンションが上がっている私には、ノーダメージです。


「わんわん」

「そうそう『わんわん』ね。ちみたん、賢い♡」

「むふん」


 得意げなお顔も、可愛いです♪


「「ぎゅー♪」」


 ちみたんと、ぎゅー。

 ……至福……♡


「一個減ってるし……」


 ツッコミどころは、そこじゃないと思うの。お姉ちゃんは。


「おちみさん。2月はね『にゃんにゃんにゃん』の日があるのよ」


 母様も反対側からおっとりと、ちみたんに教えています。


「ママさんも話に乗らなくていいから」

「にゃんにゃん」

「そうそう『にゃんにゃん』ね。ちみたん、賢い♡」

「むふん」

「「ぎゅー♪」」

「だから一個少ないって」


 だからツッコミどころは、そこじゃないと思うの。


 おやつの後は、ちみたんとお絵かきです。


「ここ」

「はーい」


 ちっちゃい指が示した場所に、簡素化した車を描いていきます。

 大小様々に大きさを変えて描くと、喜んでくれるんです。

 その後の、木やお星様までは良かったんですけどね……


「ワンワン!」


 この日は、なぜか〝いないい○いばあっ〟の大人気キャラクター、ワンワンをリクエストされてしまいました。

『わんわんわん』の日には、ピッタリなんですが……


「あの……まるちゃんにはハードルが高いので、もうひとつ車を――」

「ワンワン!」


 いやあの、描いて! と言われましても……


「えっと、お星――」

「ワンワン!」

「……はい」


 ここに! 早く! という、ちみたんの圧に負けた私。

 泣く泣く描き始めました。


「ワンワン (≧▽≦)」

「うん、楽しみね……お顔の輪郭をね、描いてますよ」

「ワンワン (*´∇`*)」

「次は耳ね。えーと……こんな感じでしたっけ?」

「ワンワン…… ( ゜o゜)」

「目ですけどね……だいぶ、雲行きが怪しいですよね、わかります」

「ワンワ…… (・。・;)」

「うわあぁぁん! せめて『ン』まで言ってー!」


 だから違うのにしようよって言ったのに……!


画伯・・なんだから! まるちゃん、画伯・・なんだから! 簡単な絵しか描けないんだから……っ!」


 クレヨンを握りしめて「くうっ」となっている私と。

 (´・-・`) ←こんな顔でワンワンモドキを見つめるちみたん。


 テーブルのほうから、


「相変わらずコントみたいね」


 とか楽しそうな声が聞こえますけども……!

 母様、他人事だと思って……っ


 見かねた妹が、むーちゃんを母様に預けて、違うクレヨンで〝正しいワンワン〟を素早く書いてくれました。


「おぉ……さすが『模写の女王』……!」

「聞いたことないけど」

「今、思いついたの。すごいね! 本当に上手♪」

「ワンワン (≧▽≦)」

「ちみたんもめっさ喜んでるし。ありがと♪」

「どういたしまして」


 ここで一件落着かと思った私は、甘かったようです。


 妹が書いた〝正しいワンワン〟を指差し、


「ワンワン (≧▽≦)」

「うんうん。そうね。本当のワンワンね」


 続いて、私が書いた〝モドキ〟を指差し、


「ワンワ……ン (´・・`)?」

「違うから! 違うって一番わかってるの、まるちゃんだから……!」


 『ン』まで言ってとか、もうワガママ言いませんから……!

 これ以上は、勘弁してください……!



 『わんわんわん』が、〝ワンワン〟で画伯・・だとバレてしまう日とか、聞いてないです……!

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