マルチーズ? パイナップル?

 各地で梅雨入りしましたね。

 こちらも〝何となく梅雨入り〟宣言が発表されました。

 少しまとまった雨が降ってくれることを願います。


 ……雨雲さん、ダムが干上がる前にお願いします。出張費は、たぶん経費で落とせますから……



 雨乞いをしたところで。

 ともかく毎日気温が高いので、


 ……夏だよね、これは。いっそのこと、季節を先取りしようかな……


 などと思い立ちました。

 

 何が『いっそのこと』かはわかりませんが、おそらく午後の暑さで思考回路がショートしていたのでしょう。


 早速、いわゆる〝パイナップル頭〟にするため、髪を頂点で結びました。

 前髪を上げるだけで少し快適さを感じます。


 決めました。

 今日は、このままで過ごします。


 居間に入ると、母様がいました。


「まるちゃん、今日はマルチーズ?」

「パイナップルです」

「あらそうなの。……『まるちゃんが、マルチーズ』……ぷふっ」


 ツボに入ったようです。


「……ねぇ、マルチーズのまるちゃんがチーズを食べたらどうなるの?」

「『マルチーズのまるちゃん』は、すでに私じゃないので、ワンコがチーズを食べている絵面になりますね」

「あら。それじゃつまらないじゃない」

「とんちみたいな答えは、期待しないでください」

「んもう……チーズ食べる?」

「……後でいただきます」

「お茶は?」

「ください」


 母様とお茶をしていると、外仕事から上がってきた父が一言。


「ん? 今日はマルチーズか」

「パイナップルです」


 夫婦して同じことを言わないでください。


「〝まる〟なんだから、マルチーズでいいだろう」

「そうよね」

「母様まで参戦しないでください。語呂は良いですけど」

「そうでしょ。お父さん、お茶どうぞ」

「ん。ありがとう」


 3人でお茶をします。水分補給は大事ですから。


「どうして今日はマルチーズなの?」

「ですから、パイナッ……マルチーズでいいです」


 時には諦めも肝心ですよね。


「前髪を上げれば、気分も変わるかなと」

「良いじゃない。マルチーズみたいで」

「そうだな。チーズ食うか?」

「……後でいただきます」


 何でそんなに気が合うんですかね。



 後ほど、母様からもらったチーズをもぐもぐしていると。


「お父さん、マルチーズのまるちゃんが、チーズを食べてるのよ」

「本当だな。もうひとつ食うか?」

「……もう充分なので、お気持ちだけいただきます」


 私は『マルチーズのまるちゃん』ではないので、餌づけはしなくていいですよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る