母様の体質
連日、季節外れの高温が続きますね。
上空で〝真夏並熱気衛門〟と名乗る厳つい風貌の武将が、冬将軍以上の貫禄で居座っているせいだとか。
ラピ◯タのムのつく大佐が、
「そこをどきたまえ」
などと言ってくれたら、解決──したらいいなぁ……
我が家では、午前中から水枕を抱えている私の様子を、母様が見に来てくれました。
「このお部屋、暖かいわねぇ」
「母様にはちょうど良いくらいですよね」
「そうね。まるちゃんには暑いんでしょ?」
「溶けそうです」
母様は夏生まれの低体温。
私は冬生まれの子ども体温なので、体感温度が合わないんです。
「ママ、このお部屋にいようかしら」
「午後になったらクーラーつけますけど、良いですか?」
「えっ。まるちゃん、ひどい」
「この部屋しか、クーラー
「ここでちょっと休もうと思ったのに~」
「……薄掛けに、今なら綿毛布をつけて、何と特別価格の3980円!」
「枕は?」
「セットなら、4980円ですよ」
「んー、どうしようかしら」
「この機会を逃すと、6980円になりますよ。奥さん、どうします?」
「急に高くなり過ぎじゃないの?」
こんな会話でもしていないと、意識が〝真夏並熱気衛門〟に乗っ取られます。
そうなると、口から出る言葉がすべて、
「……ウダルワー……」
になってしまうという、恐ろしい呪いが……
なので、会話に乗ってくれる母様には感謝しております。
✽✽✽
午後、母様がミノムシになって寝入ったのを確認してから、静かにクーラーの電源を入れました。
〝ピッ〟という動作音に一瞬反応したものの、すぐに「ふすー」という寝息に戻り、ホッとしました。
今まで、汗腺が多くて熱が逃げやすい母様の体質は大変だとしか思わなかったんですが……この気温の中では、羨ましく感じてしまうほどです。
体温とほぼ変わらない気温とか……お湯なら寒いくらいなのに……
〝何で?〟と、ぐーぐる先生に訊きました。
……ほうほう。熱伝導率……水のほうが、空気より熱伝導率がいいから……へぇ……
──ちょっと空気さん。二酸化炭素を溜め込むことに必死にならなくていいから、水を見習っておくれよ。
地球の外に、ちょちょっと熱を放出する技とかね。
それがダメなら、気温が高くなっても、涼しく感じる機能とか搭載してくれても良いのよ?
母様の寝息とクーラーの稼働音の中、いろいろと考えていたら……あらやだ。お熱が上がりましたわ。
……母様。今だけ。
5分だけで良いので、体質チェンジしませんか?
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