豆腐メンタル(弟)への試練
連休を利用して、弟が帰ってきました。
「たまには顔を見せないと、寂しいと思ってさ」
《久々に帰省した家族が、このように言いました。正しい返答を、次の3つの中から選びなさい。ただし、その家族はツンデレ系豆腐メンタルとします》
1.「2日しかないなら、向こうで休んでたほうが、体が楽だったんじゃない?」
2.「道路混んでたでしょ。お疲れさま」
3.「別に」
突然始まった脳内クイズ。
3を選んだら、確実に拗ねます。
残るは、1か2か……
4.「ポンちゃんお帰り。疲れたでしょ。2日だと休んだ気がしないわねぇ」
正解は、4でした!
考えている間に『良き母』の母様に先に言われてしまったので、私は無難な言葉をチョイスしました。
✽✽✽
お茶を飲みながら、近況報告を聞きます。
「──で、近いうちに社内運動会があるんだけど、俺のジャージまだある?」
「んー、何年か前のがタンスにあるけど……入る?」
確かに、ここ数年で体型が変わりましたが……母様、ストレートに聞きますねぇ。
純粋な心配なので、弟は、
「……お、おぉ……」
と、若干うろたえながら、自分のお腹の肉を摘まんでいます。
「着られなかったら、新しいの買わないとな……」
「なら、せっかくだから、全身タイツ買ったら?」
さすがです、母様。
斜め上を行きますね。
「……俺が出るの運動会だし。仮装大会じゃないから」
「盛り上がるわよ、きっと」
「その根拠のない自信は、どこからくるんだよ」
「前にテレビでやってたの」
「……何見てるんだ……」
「たまたま点けたら」
「それ、たぶんバラエティーだから。娯楽を与える番組だから」
「社内運動会は娯楽じゃないの?」
「え? いや、仕事の……一環……いや……娯楽か……?」
弟が、母様ワールドに迷いこみました。
ここは、
「運動会の日はお給料出るの?」
「休日だし、全員参加じゃないから出ない」
「じゃあ娯楽で」
「『じゃあ』って何だよ……」
私の案は、お気に召さなかったようです。
「とりあえず、ジャージ見てくるわ。どこに入ってんの?」
「一番上の引き出しよ」
母様から場所を訊いた弟は、お礼を言って階段を上がって行きました。
✽✽✽
数年ぶりに袖を通したジャージ姿で、2階から降りてきたんですが……
「「…………」」
思ったよりショックを受けている弟と、何と言葉をかけたらいいのかわからない私は無言です。
「あら~、見事な〝たぬきさん〟ね~」
母様は楽しそうに、弟のお腹をつついています。
ぶれない母様が素敵すぎます。
「……買ったほうが良いよな……」
「そうだね。白でいいんじゃない? 全身タイツ」
「姉貴もまだそのネタまだ引っ張るのかよ! だから笑いを取るためじゃないっつーの!」
少し元気になった弟は、連休明けに買いに行くそうです。
全身タイツでなく、ジャージを。
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