第12話 予言、騎士団副長ルゥ-2
悠の肌にぴりぴりとした痛みが走り、髪先はチリチリと焦げ始める。
辺りの速度はほとんど止まっているかのようになり、悠の目の前に突如出現した爪先ほどの小さな光の玉が少しずつ膨張していく。
(あ、これまずい)
悠はその光の玉を撃ちだした少女、ルゥの方を見る。
悠に向かって杖を突きだし、顔は横から来る何かを見るような状態で動きを止めていた。そのルゥの視線の先には四肢を使って跳躍し、ちょうどルゥの脇腹辺りに飛びかかる姿勢でヴィスラが居た。
(この玉、さっきみたく爆発するんだよな!?)
悠はほとんど止まった時間の中で、半ばパニックにながらも考える。
だが、その考えている間にもほんの少しずつではあるが光の玉はゆっくりと膨張していく。同時に、肌から感じる熱量もまた高まっていきつつあった。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう)
悠は愛用の釣り竿を片手に打開策を考えるが、特に思い浮かぶことはない。
そうしている間にも光の玉は大きくなっており、いつの間にかその大きさはこぶし大ほどになっていた。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう。あっ)
悠はふとあることを思いつく。
(……この竿を使えば!)
悠は手に持った釣り竿で、その光の玉を突き刺す。
光の玉を少しでも自身から離せば、爆発から多少なりとも逃げられると思いついたのだ。同時に思いっきり、後ろへと跳躍する。
そして、時間が元の流れを取り戻す。
「えっ?」
「は?」
悠とルゥは同時に声を漏らす。
爆発をもたらす魔法”
「どこ見てるさねっ!」
「う”っ!?」
ヴィスラのかぎ爪はルゥの左脇腹へと深々と突き刺さる。だが全身をバネのようにして突進したヴィスラの勢いは止まらない。
爪を突き刺した状態で、ヴィスラは力任せに壁へと吹き飛ばした。
「あァあァ、この程度で死なないでおくれさね。アンタらには色々聞きたいんだからさね」
ヴィスラは周りに潜んでいる清廉騎士団の射手が放つ矢を、まるで羽虫のようにたたき落としながら口角を上げる。そして時折鋭い牙を見せながら、さも楽しいことのようにくぐもった笑いを漏らす。
矢をたたき落としながら、一歩、また一歩とルゥに向かって歩いてくる。
「さァて、さて。アタシに楯突いたことを後悔させてやるさね」
「ふ、副長っ!だ、大丈夫ですかっ!?」
潜んで弓を構えていた騎士団員の1人が、壁へと叩きつけられたルゥの元へと駆け寄る。
ルゥは焦点の合わない視線で、その団員を見つめる。
「わ、私なら……、だ、だいじょ、うぶ……」
ルゥの脇腹からはおびただしい赤黒い血が流れ、白いドレスを赤黒く染め上げる。
壁に叩きつけられた時に強く頭を打ったことにより、頭部からも血が地面へと滴り落ちていた。
「わ、私は、この、使命を果たさなきゃ……。 聖、女様が、おっしゃった、この、し、使命を……」
ルゥは脇腹から零れかけた臓腑を無理矢理元の場所へと押し込むと、団員の肩を借りて立ち上がる。
そして震える指で杖を握り直す。
「”
歩いて来るヴィスラの目の前で爆発。地面は揺れ、空気は震え、辺りには衝撃波が広がる。
地面のレンガは粉々に砕け、再度大穴が穿たれる。だが、ヴィスラは足を止めることなどなかった。
「これしか出来ることはないさね?」
「ば、化け物、めっ……」
ルゥの指から杖が地面へと落ちる。
そしてまるで糸の切れた人形のように地面へと崩れ落ちる。
「ふ、副長っ! 副長ぉー! ぐぅっ!」
ルゥが地面へと崩れたのに気を取られた団員は、ヴィスラによって無造作に投げられて地面へと転がる。
そしてヴィスラが、ルゥまで後一歩という時。
「”
突如としてヴィスラに向かって氷柱の矢が降り注いだのあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます