EP19 星空大戦

満月。


それだけでも明るいのに、周りには星達がキラキラと点滅して過剰に夜空を彩っている。


天体観測が趣味の僕は今日も街の外れにある湖まで来ていた。


湖の周りは野が広がり、その周りは木々が生い茂る。

田舎ということもあり滅多に人は来ない…

最高最適の観測スポットだ。


「さてさて…」


望遠鏡を組み立て、お気に入りの位置を探す。

この準備とて至福の時間である。


組み立てた望遠鏡をニンマリと微笑みながら眺める。


今夜はどの星がよく光ってるかな?なんて思いながらまなこをレンズへ。


星海せいかいが広がるこの場所に来るたび、僕は現実の一切を忘れ、幻想の世界に身を委ねる。


秋に入り幾分いくぶんと星も少なくなったが、やはり心を洗ってくれるものだ。


夏の星座らを横にやり、カシオペア座、おうし座、馴染みの星達を観測していると不意に何かが横切った。


「流星?珍し…」


だが一つではなく、瞬く間に無数に現れたそれらを見て僕はある事に気づく。


段々と近づいて来ていることに。


望遠鏡に釘付けとなり目が離せない。


そんな中、僕の横に何かが落ちる。


音を立てて砕け散ったそれは剣の様だった。



それだけではない、近づいてくる流星の周りから山ほどの異物が降り注いできたのである。



「ちょっと…待ってよ」



慌てて望遠鏡を担ぐと一目散に逃げる。



幻想は一瞬にして打ち砕かれたのだ。


比較的無事であるだろう少し離れた木陰に身を隠し、小型の双眼鏡で周りを見渡す。


ドサドサと音を立てて、中には聞いたことのない音も。


何かの部品だろうか、よく見ると粉々になった衛星の欠片も降ってきている。


「嘘だろ……?」


こういう時は意外にも驚かないもんだと自分に関心しつつ望遠鏡を横に構え木陰から少し身を出す。


再び空を見上げる。


「あらららら」


星達は更に近くなり、予測するに辺りに墜落するだろう。


警察、警察と思ったのだが、そもそもこの状況は警察の管轄なのだろうか?それにここは街から遠い、まぁこの状況は街から見ても一目瞭然だと思ったので僕はこの場に留まることに決めた。


望遠鏡と双眼鏡を交互にして辺りの落下物を確認していく。



「君、危ないぞっ!」


後ろから掛けられた声に身体を跳ねさせ、恐る恐る振り向くと、長髪の男が立っていた。


僕と歳に差はないかもしれない彼…

そんな彼は手に刀を持って禍々まがまがしくも感じるオーラを放っていた。


「えぇ!?それ、危ないですよ!!!」


そう言ったのもつか、彼の刀が僕の横を切る。


目だけを横にやると、見たことのない生物が真っ二つになっていた…


禍々しいなんて思ってごめんなさいと心での謝罪を済ませ、命を救われた事を彼に感謝する。


「あの………その、ありがとうございます………これ、何ですか……」


僕の声は震える。


「異星人とでも言っておこう」


切られた異星人の手には最初に落ちてきたのと同じ剣が握られていた。


彼は続ける。


「我々の仲間が今、落ちてきてる星を破壊している最中だが、多少の墜落は免れん」


「何が…起きてるんです?衛星は落ちてくるし、変な部品とか石とか…………挙句に星が落ちてきてるし…」



「戦争だ………キミの…地球キミたちの真上で…」










これはこれで違った幻想か。

または違う現実に引き戻されたのか。



理解するより先に身体が動いた。



僕は剣を拾った。

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