EP15 黄昏

残りの余命、あと数ヶ月。


時間は無駄にせず、この数ヶ月を僕は気楽に謳歌おうかしよう。


窓際のベッドから起き上がる。


この窓は最高の額縁で常に美しい風靡ふうびをもたらしてくれる。


すぐ側には想い出の桜が。


辺りは黄昏たそがれ。


陽は落ち、あっという間に月が昇る。


夜風はほおぜ、桜の花弁はヒラヒラと落ち横にある池へと。


水面を揺蕩たゆたう。


月明かりを浴びて僕の心は昇華しょうかする。


たまに口ずさむ言葉は儚い貴方の魂の音色。


このノートに書き留めた貴方の心をこの桜木の真下で奏で続けました。


数多の年月。


それもあとわずか数ヶ月。


いつか貴方が戻ってくると信じつづりました。


幾度いくどと風はぎ、四季が巡る間に何故という疑問も薄れていった。


ふとした拍子に貴方の微笑が脳裏へ。


余儀なく流れる涙は、一滴また一滴とこぼれ波紋を広げて。


遂に認める。居ない貴方を想い。


魂をめる。


忘れない様に意思を通す。


たまに口ずさむ言葉は儚い"貴方"と"僕"の魂の音色。

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