EP16 災難

「えっ?何?」


「だから…助けてほしいんだって」


現実か?俺に話しかけている…

そう………犬が。

怖い。単純に怖い。


神様、俺はジュース買いに来ただけなんですけど…


しかしこの出来事を肯定してしまえば、それはそれで怖い。

かと言って否定してしまえば俺がおかしくなったも同然。つまり怖い。


「ねぇ、無視しないでよ」


「あ、ごめん」


普通に返事してしまった。


「ちょっと先にジュース買わせて…」


お金を入れて自動販売機のボタンを押す。


「あれ」


ジュースが出てこない。嘘でしょ。

しょうがないのでもう一本分のお金を入れよう。


「また出てこないかもよ?」


「うるさい…………あっ」


手が滑り溝に飲み込まれてゆく小銭達。


「災難だね…」


お前と出会ったことがか?


三度目の正直。お金を投入しながら、俺は犬に質問する。かなり異様な光景。


「てか、なんで俺なの?」


「それ聞いちゃう?」


関わるんじゃなかった。


「まず名前とかあるの?」


「あるにはあるんだけど、自分でも納得が言ってないというか、可愛がってくれてることには感謝してたんだけどねぇ、やっぱりそこは僕も譲れないっていうか」


「めっちゃ喋るやん…で、結局何なの、名前?」


「…ポチ」


「王道!!!」


「逆にどうよって感じでしょ?」


「確かに…でも、あえてポチなのかもしれない…」


っていかん、会話に花咲してる場合ではない。


「えーっと、そうじゃない………助けてって何をどう助けるの?見た感じ元気そうだし問題なさそうだけど?」


「見た感じって見た感じがダメなんだよ!」


………どういうこと?


「え?どういうこと?」


もはや思う事はそれしかないので、そう言うしかない。


「分からない?!元は人間なの!」


「?!」


とんでもないことに巻き込まれとる。


「ごめん、理解追いつかない」


「順を追って説明するね」


このポチとやらは、どうやら俺に助けてもらう気満々の様で、犬になってしまった一部始終を聞きながら家に帰ることにした。


まぁこれはこれで面白そうなのか、はたまた…


「あ………ジュース取るの忘れてた」

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