第65話 甘いおみやげコットンキャンディ

 遠来の友からの手土産には、いつも思わずにっこりしてしまいます。

 時に美しく時に可愛く常に美味しい手土産を用意してきてくれるのですが、今回もふるってました。



 手渡されたのは、細長い箱。

 そして、楽し気な声。

「さて、これはなんでしょう」

「なんでしょう、っといきなり言われても、ヒントは」

「ヒントは、箱の文字やらなにやら」

 と、言われて、まず目に飛び込んできたのは、「zarame」の文字。

「ザラメ、というこは、お砂糖を使った何かかな」

「そう、京都に出かけた時に発見」

「京都でお砂糖、生菓子ではないだろうから、あ、わかった、金平糖! 」

「惜しい」

「惜しい? 」

 惜しいというのは、砂糖菓子の点か、駄菓子の点か、再思考。

「もう一つヒント」

「何? 」

「縁日」

「縁日、あ、」

 そこで、ようやく気づいたパッケージに描かれたイラスト。

 ビードロの代わりに綿あめをくわえた歌麿風美人。

 明治以降の甘味綿あめをお江戸美人に配した面白いパロディ画。

「綿あめ! 」

「正解」

 言われてよくよく見てみれば、美人の画題は「京綿菓子」、「zarame」の文字の下には「gourmet cotton candy」。

「ちなみに、zarameは、嵐山にある京綿菓子の専門店の名前」

「なるほど、コットンキャンディ、ね」


 帰ってから箱のふたをあけますと、中には包みが三つ。

 京抹茶ラテ。

 いちご味の綿灯華。

 ほうじ茶ラテ。

 かき氷にのっけても良さげな風味。


 ラッピングペーパーには風味の説明が「おあがりやす」の言葉を添えて記されています。

 ちょっと引用。


「京抹茶ラテ kyo matcha latte 抹茶のプロが厳選した京都産宇治抹茶を使用。本格派抹茶ラテをいつもと違う触感でお楽しみください。」

「綿灯華 men tou ka strawberry mix 甘酸っぱい苺の酸味がアクセントになって、ついもう一口となる爽やかさがおすすめ。」

「ほうじ茶ラテ houjicha latte 京都産ほうじ茶の芳醇な香ばしさがクセになる大人のほうじ茶ラテ味。」


 読みながら湧いてくるそれぞれの味。

 包みをあけると中にはコンパクトに収まった綿あめが。

 ちょっと摘まむと飛び出してきて、もわっとふくらむ一回り二回り。



 ところで、縁日のふわっふわっの大きな綿あめを、氷魔法の器に盛ったら、かき氷に変化しそうだと思いませんか。


 綿あめって、作り方が、魔法みたいですよね。


 綿あめは、砂糖の性質、加熱での液浄化のしやすさと冷却による簡単な再結晶化の特徴が活かされているお菓子です。

 まず、綿あめ製造機に白双糖しろざらとうを入れて、加熱して回転させます。

 製造機の側面にあけた小さい穴から液体化した砂糖が飛び出してきます。

 空気中で一気に冷却されることで、砂糖は細い糸状の砂糖になります。

 その細い糸状の砂糖を木の棒に次々と絡めとっていきながら雲のようにふわふわと大きくしたものが、縁日などで目にする綿あめです。


 ウッドステッキを振り回しながらの綿あめ作りは、気分は魔法少女、かもしれませんね。


 甘いおみやげ、美味しくいただきました。


 ごちそうさまでした。



※砂糖はお菓子作りに欠かせない材料です。

 綿あめの原料はザラメ、白双糖しろざらとうです。

 砂糖についての解説を、こちらでご覧いただけます。


『あやかし冥菓見本帖』

第十五話 甘味の魔法でやわくなる

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054884556736/episodes/1177354054884813719



 








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