第18話 今更だけど立派な管理者さんになろうと思います
「ひたすらあやしいだけじゃなかったんだな」
私の説明を聞いたディール君は、そう呟きました。
分かってくれたかな。
事情を全部話し終えた後、管理の塔に辿り着いたら、ミツバさん達と合流できました。
良かった。怪我はしてないみたい。
ちゃんと元気です。
大丈夫かなって心配だったから、やっぱり話に聞くだけより、この目でちゃんと見ると安心できて嬉しいのです。
あと、サクヤ様達のところの兵士さんもたくさん来てくれてました。
追手さん達を散らす為にすぐにどっかに行っちゃったけど、後でちゃんとありがとうございましたって伝えたいな。
その中にチョコさんがいたのは驚いちゃったけど。
「お世話焼きに来た」だって。良い人だなぁ。
あと、隣にいる男の人は誰なんだろう「21さん」って言ってたけど。
あれ? その言葉、最近どこかで聞いた事がある様な気がする。
でも、大半の追手さん達はどこかに行っちゃった代わりに、私達のところにやってきた他の人がいるの。
あ、人じゃなくて機械さんだ。
「ヤアヤア、お嬢さんたち久しぶり、おじさん案外運が良いみたいだねぇ」
久しぶりのマキーナさんなのです。
数日前に見た時とあんまりかわらなくて、まるまるぴかぴかしてます。
「あのね、マキーナさん実は……」
「無駄だハルカ。今のこいつに何言ったって、戯言にしか聞こえやしねぇよ」
私は誤解を解こうと話しかけるんだけど、ディール君が止めちゃいます。
確かに素直に話を聞いてくれない可能性の方が高いかもしれないけど、私はそういうのは良くないと思うのです。
ちゃんとお話できるのに、その機会を放り投げちゃうのは寂しいもの。
後で出来るって言って後回しにしても、良い事なんてあんまりないのです。
だから、私はままずディール君達に謝る事にいました。
「ディール君、ごめんね。マキーナさん、お話してください。私、管理者になろうと思うのです」
だけど、私の言葉を聞いた二人はそろって不思議そう。
「……?」
「はぁ? 今更何言ってんだよ」
マキーナさんはちょっとコロって転がって、ディール君の方はそんな風。
あ、ちょっと言葉足らずだったかな。
反省反省。
意味が伝わらなくちゃ意味がないもんね。
「私、今までは状況に流されるばっかりだったけど、この世界で、自分の意思で管理者になろうと思ったのです」
巻き込まれたのは偶然みたいな事だったけど、今ははっきりそう思うんだ。
だから私はマキーナさんにも向き直って、そうなんだよって伝えます。
「なります!」
「いや、今聞いてたからおじさんも知ってるけど。……それで、この世界を縛る予言を守ろうってかい? お嬢さんに達もお嬢ささん達なりの信念があるんだろうけど、こっちも譲れないものがあるんでね」
マキーナさんの言葉に私は首を振って否定。
私のなりたい管理者さんは、守るとか、壊すとか、そういうのとはちょっと違うのです。
「私は管理者さんとして、この世界を守って、予言と共存できる世界にしたいって思うのです。その為に頑張ろうと思いました」
それを聞いたディール君は慌てて、ミツバさんは「おや?」って顔。
本当にごめんなさい。
でも、私がなりたいのはそういうのなの。
「はぁ? おい、ハルカ。何言ってんだよ」
話が違うとばかりに要って来るディール君だけど、それだけは私譲れないの。
「道具は道具だよ。ディール君。私は、道具に良いも悪いもないと思うのです」
「だからって、このまま予言があったら、お偉い連中のいい踏み台にされるだけなんだぞ」
「そうかもしれないけど。ディール君だって、自分で知ってると思うの。予言は追手さん達に使われれてるから良くないんだよね?」
「それは……」
道具が悪いなんて事を言ったら、誰かを傷つける物や誰かに嫌な思いをさせる物は、存在するだけで悪いって事になっちゃう。
けどそれは違うって思うの。
この世界の人達は、確かに予言のせいで悲しい思いをしてるのかもしれないけど、それでもちゃんと付き合ってる人もいると思うんです。
だから、大事なのは悪い人に悪用されないバランスなんだって私は思いました。
「だからね、私は予言を無くさないままで、皆が笑顔になる世界にしたいって、そう思ったのです」
「綺麗事だろ。ありえないだろ。できるわけない。そんなの」
「そうかもしれないね。でも、綺麗事だって、ありえないって思ってても、最後まで諦めずに見続けてた人が夢を叶えてきたんじゃないかな」
「けど……っ」
頭を掻きむしって悩むディール君。
もっとうまく気持ちを伝えられないかなって思うけど、説得とか説明とか得意じゃないからなぁ。
でも、そこに声をかけてくれるのはミツバさんです。
「良いじゃないですか。こちらは協力させてもらっている身なんですから。彼女が手を貸して下さらなければ、私達は何にもできないんですよ。当分の間は、見ていてあげてもいいのではなですかね」
「本気かよ」
「では、逆に聞きますが、ディールはハルカさんが中途半端な意思で、言っていると?」
「それは思ってねぇけど。こいつはフワフワしてる様に見えて、意外と胆力とかあるし」
えへへ、誉められちゃった。
間接的だけど、ディール君にそういわれるのは嬉しいのです。
私は思わず顔をふやけさせちゃう。
「ああ、もう、そんな顔すんなよ。分かったよ。できるもんなら、やってみろよ。できるもんならな。できねぇだろうけど!」
「ありがとうディール君、ミツバさんも」
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