第31話 031 銀行
男が商人ギルドの会長に銀行についてを詳しく説明してやったらば。
直ぐにでもと返してきた。
それにマリーが乗っかりあれやこれやと話始める。
金が絡むと二人は似た者同士の様だ。
話が長く成りそうなので男は席を立つ。
好きにしてくれとそんな感じだ。
そしてその頃にはロイドは、もう既に居なかった。
「マリー、行かないのか?」
一応は尋ねてみる。
後で何で誘わなかったの? と文句を言われるのが嫌だからだ。
「アンタ達で行ってきて、私は今から忙しいの」
コチラを見ずに。
そうですかと、男は頷いて部屋を出る。
返ってきた答えは予想どおりだった。
屋敷に戻るとジュリアが。
「これを預かっています」
と、金貨10枚と魔法の証文を渡してきた。
ルイ家の署名もロイドの署名も、既にある。
しょっちゅう出入りしているコツメでは無くジュリアに頼むとは、あの主もチャンと理解しているようだ。
しかし、隣の屋敷から直接でも間接でも証文とお金を受け取れば自動的に契約出来るとは。
ホントにこの魔法の証文は大したモノだ。
「出発するぞ」
準備は先にさせてあるので男は号令を掛けるだけ。
今回はマリーとジュリアとムラクモと男と蜂ダケで行こうと思っていたのだが……。
マリーが抜けてしまったのは仕方無いが、コツメが付いて行くと言い張り、ゴーレム達も強引に誘ってメンバーに加わった。
ヒヨコは置いて、その幌車の所に買い付けたモノを載せるつもりだ。
少人数で行くつもりだったのだが……結局はそれなりの人数に成った。
そして蜘蛛達のダンジョン。
ソコはすっかり様変わりしていた。
糸で街中が真っ白だ、雪化粧成ならぬ糸化粧状態。
その中央、交差点で蜘蛛達5匹が男達を迎えてくれた。
全員、元気に挨拶をしてくる。
相変わらずに喋りはしないが、雰囲気だ。
レベルもしっかり上がったのか、背中が赤く染まっている。
もしかしてセアカゴケグモだったのか?
「引き続きココを守る様に」
と、男は蜘蛛達に伝えて先を急いだ。
ドワーフの村にトラックを乗り付けると、皆がワラワラと集まって来た。
「村長は居るか?」
男の一言に群衆が割れて、村長のお出ましだ。
「コレは冒険者さん」
キョロキョロと怯えぎみに辺りを見渡す。
「今日はマリーは居ないよ」
その言葉に明らかにホッと成る。
そんな村長にリストを渡して。
「商人ギルドの使いで買い付けに来た」
と、告げるとにこやかに対応してくれた。
ドワーフ達が次々に商品を幌車に積んでいく。
その間、男は防具屋に寄った。
その殆んどが差し押さえの札が貼られたままだ。
その中から魔法使いのローブを貰う。
少しどころか相当に大きいサイズなのだが、コレしかない。
が、袖を通した瞬間にピッタリのサイズに縮んだ!
成る程コレは便利だ。
そう言えばマリーが服に魔法がとか言っていたなと、思い出す。
コレも含めての事だったのかと、納得した男。
ああ……そうか、アルマが小さいのは小ゴーレムが一度着たからだったのか。
だから同サイズ、コレも納得。
等と新しい発見に感心仕切りの男をムラクモが迎えに来てくれた。
商品リストの積み込みが終わったそうだ。
村長達の所へ戻った男は魔法のリストを確認、ソコに書かれていた品目が総て消えていた。
村長の兄も既にソコにいた、ジュリアが呼びに言ったらしい。
その爺さんが幌車の中を覗き、ミスリル銀のコップを手に取り。
「コレは良い感じのモノじゃの」
シゲシゲと舐め回す様に見て。
「わしにくれんか?」
そして口許に当てて見せる。
「コレで酒を飲めば旨そうじゃ」
魔法のリストにミスリル銀のコップと、消えていた筈の文字が浮かび上がった。
男はソレを村長に見せて、爺を見た。
「兄さん……辞めてくれ」
コップを取り上げ、幌車の中に戻す村長。
するとまたリストから文字も消えた。
「ジュリア」
男は呆れ気味にジュリアを呼んで。
「爺さんをトラックに乗せてくれ」
ほっとくとヤヤコシイ。
「さて、コレが代金だ」
そして金貨500枚の巾着を抱えながらに村長に渡す、ヤハリ重い。
受け取った村長も、重そうだ。
魔法の証文、保険の契約書を確認すると、金額の欄に0の文字。
詰まりは残金無しの丁度と言う事か。
ソレを村長にも確認させて、里を出る。
その出しなに、村長から土産を貰ったのだがソレは酒瓶だった。
男は、呑まないと断ったら、村長は首を横に振り爺を見る。
成る程と頷いた男。
使わさして貰う事にする。
道中何やら五月蝿い爺に、村長の酒瓶を渡した途端に上機嫌で呑み始めた。
このまま寝てしまえば良いのだが。
そして、蜘蛛達の所でコツメがとうとう切れた。
変な歌を歌い出した爺にだ。
「ココで止めて」
男に。
「シグレの乗ってる様なヤツを私にも頂戴」
耳を押さえながら叫ぶ。
確かに五月蝿い。
その気持ちもわからんでは無い。
「どれでも好きなのを引っ張って来い」
男は手を振って。
「乗れるようにしてやるから」
急いで飛び降りたコツメ。
そのコツメが引いて来たのは、可愛らしいスクーターだった。
それに魔法を掛けてやる。
乗り方を適当に教え、暫く練習。
スグに乗れるように成った、流石の自称忍者様だ運動神経は悪くない様だ。
そして、再出発。
しっかりとスクーターで付いて来るコツメ。
ちょっと楽しそうだ、もしかすると最初からコレが目的だったのだろうか?
その後も、何事もなく街に戻り、商人ギルドへと向かった男。
その商人ギルドは人で溢れていた。
よく見ると、冒険者ギルドも長蛇の列。
何事かとゴッタかえす人混みを掻き分け建物の中に入り会長を探す。
建物の中、人混みに向かってマリーが叫んでいるのが見えた。
そのマリーに近付き、会長はと訪ねると。
忙しく客と何やら受け答えをしながら、手だけで。
左を指し、階段。
そして上を指す。
言われた通りに階段を登ればスグに会長に会えた。
その会長、男を見るなり少しガッカリした顔を一瞬見せた。
まだ、期待してたのか?
「ところでコレは何の騒ぎだ?」
「銀行業務を初めまして」
銀の小さな板を見せる。
「魔法のカードでお金を管理出来るようにしました」
「それだけで、コレは無いだろう」
「はい、マリー様の提案でクレジット機能付きです」
頷いた会長はカードの一部分を指差して。
「担保は自身の生命保険です」
成る程、ソレで冒険者ギルドにも人が集まっているのか。
保険ギルドも大儲けだ。
「買付の品ですよね」
頷いた男を見て。
「裏口から適当に搬入しといて下さい」
と、慌ただしく走り去って行く会長。
男は言われるがままに荷物を下ろし。
騒がしいホールを指して。
「マリーを手伝ってやってくれ」
と、ゴーレム達に伝えて、男はルイ家に爺を届けに行った。
もちろん、コツメは既に消えている。
酔っ払いの爺を抱えてルイ家の屋敷に入る。
主はそんな爺を見て笑っていた、この姿も想定内の出来事のようだ。
その爺を身内なのだからとジュリアに任せた男は、自分の家に帰る事にする。
コレで後は村まで送ればソレで終わりだ。
ソレはムラクモとジュリアに丸投げしよう、もう爺は面倒だ。
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