笑って頂戴

癒陽

彼は只愛されたかった。隣で笑ってくれる友達が欲しかった。良い事をすれば褒めてくれ、悪い事をすれば叱ってくれる親が欲しかった。然し、それらを求めることは許されなかった。ーーーーー否、許されない、と彼は勘違いしていた。泣くことさえも許されないと思っていた。だから、彼のその整った眉目は常に『笑顔』の面構を絶やさなかった。彼は、世間一般では当たり前に貰える『愛』を求めることを、最早諦めかけていた。


そして、そんな彼に差し伸べられる手があることを、彼はまだ気付いていない。



✱✱✱✱


「大丈夫だよ。」

自分が少年と出会った時、少年は身体の至る所に傷を作り、表情が無かった。まるで人形の様だった。だから咄嗟にきいてしまったのだ、大丈夫か、と。

少年は笑ってそう答えた。その表情は、吃驚した様な、然し、何かを堪えている様なものだった。

自分は何故か、この少年を守りたいと思った。

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笑って頂戴 癒陽 @oxo___m

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