第606話 思い出の酒⑥ 手紙
ギブンが残したという手紙には、彼の近況が書かれていた。
日付は店主の言ったように半年前のもので、それによると彼はとある国の国境付近にある町に滞在しているという。
「手紙によれば、ギブンさんは今ラテーズという町にいるみたいです」
「ふむ。ラテーズか――ラテーズ?」
トアから町の名前を聞いたシャウナは思わず首を傾げる。
それにつられる格好でクラーラとマフレナも同じ行動を取った。
なぜなら、その場にいる四人にとってその町の名は聞き覚えがあったからだ。
「トア様! ラテーズという名前の町をどこかで聞いたことがあります!」
「魔導鉄道よ! 魔導鉄道の駅名にラテーズってあったわ!」
「あぁ……ラテーズはセリウス王国の北部にある町の名前だ」
直接足を運んだことはないが、魔導鉄道の停車駅一覧の中に同名の駅があるのを全員が覚えていた。
「どうやら、すでにギブンはセリウス入りを果たしていたらしい」
「でも、この手紙って半年前なんですよね? なら、もう要塞村にたどり着いていてもいいんじゃない?」
クラーラの指摘はもっともだった。
途中で魔導鉄道も開通しているため、交通の便はさらによくなっているはず。
にもかかわらず、ギブンという名の男が要塞村を訪ねてきた形跡はない。
或いは誰にも名乗らず、ただ観光に訪れていたというケースも想定できた。
「ひょっとして、ギブンさんはすでに要塞村へ来ていた……?」
「毎日かなりの人数が訪れるからね。気づかないのも無理もない」
そう語るシャウナの声には元気がなかった。
トアたちにとって、ギブンとシャウナがどういう関係であったのかはまったく掴めない。
しかし、彼女の反応からして、挨拶もなく去っていくとは考えづらかった。
となると、もしかしたらなんらかの理由でまだ要塞村にたどり着いていない可能性も考えられる。
一方、トアの横ではクラーラは何かを考え込むように「うーん」と唸っている。
「どうかしたのか、クラーラ」
「いや……何か忘れている気がするのよねぇ……確かにラテーズって名前の駅があるというのは知っているけど、それ以外のどこかで名前を聞いた気がするのよ」
「そうなのか?」
「二週間くらい前、朝市に来ていた商人さんと何気なく話していた時に話題があがっていたと思うんだけど……なんだったかなぁ」
必死に思い出そうとするクラーラ。
しかし何も閃かず、結局そのラテーズという町へ移動し、情報を集めることにした。
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