第605話 思い出の酒⑤ 夢のような村
リンクルの酒屋で入手した情報。
それによると、例の呪いの酒を造ったギブンの目的地は――
「名前は聞かなかったが、随分と変わった村へ行くと言っていたな」
「村? どんな村ですか?」
トアの質問に、店主は苦笑いをしながら首を傾げた。
「どうかしたんですか?」
「いやぁ……あいつは真剣だったが、俺はどうにも懐疑的でなぁ……」
「と、言うと?」
「だって、旧帝国時代に建築された巨大な要塞をベースにして、あらゆる種族が仲良く暮らす村なんておとぎ話の世界だろう? あいつは人が良いから悪いヤツに変な話を吹き込まれたんじゃないかなぁって心配しているんだ」
「えっ?」
店主の話を聞いたトアたちは思わず顔を見合わせる。
「なんだ? もしかしてその村を知っているのか?」
「知っているも何も、私たちはその村からギブンを探しに来たんだ」
「えぇっ!?」
シャウナから真相を聞かされた店主は腰を抜かすほど驚いていた。
「そ、そういえば、あんたたちもみんな種族が違う……まさかそんな夢のような村が実在していたなんて……」
「店主、あなたがギブンと出会ったという国を教えてはもらえないだろうか」
「いいけど……あまり意味はないと思うぞ?」
大きくため息をつきながら、店主は告げた。
「今あの国は激しい内戦が起きていてな。よそ者の入国を厳しく制限しているらしいんだ。それに、風の噂で耳にした話だが、俺たちとギブンが出会った酒屋のある町も戦火に巻き込まれてもう跡形もなく消え去ったらしい」
「そ、そんな……」
ここへきて情報がなくなってしまったと、トアたちは落胆する。
――だが、その時、店主は何かを思い出したようで「あっ!」と大きな声をあげた。
「思い出した! あれがあったんだ!」
「あれ?」
「手紙だよ! 一度だけあいつから手紙をもらったんだ! 確か半年くらい前だったと思うんだが……今滞在している町の名前が書いてあったはず! ちょっと探してくるよ!」
「お、お願いします!」
潰えたと思ったヒントが思わぬところで発覚。
果たして、手紙に書かれている内容とは――
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