第599話 森でのひと時
冬の終わりが見え始め、ところどころで春の息吹が感じられるようになった要塞村周辺。
かつては屍の森と呼ばれて恐れられていた場所も、要塞村の規模が大きくなっていくとその名に似つかわしくない賑やかさと暖かさで溢れていき、今では希望の森と名前が変わったくらいだ。
そんな希望の森へとやってきたトア一行。
面子はクラーラ、エステル、フォル、そして八極のひとりであるシャウナの計五人。
今日はここで山菜取りをしようとやってきたのだ。
「いい季節になってきたね」
「はい。朝はまだ寒いですけど、日中は暑いくらいです」
遺跡調査のため、地下にいることの多いシャウナはたまにこうして陽の光を浴びるため、森を散策するのが最近の日課となっているらしい。その際、食べられる山菜が多いことに気づいてトアたちを誘ったのだ。
「しかし、この森もすっかり変わったな」
「昔は獰猛で大型のモンスターが多く、誰も近寄らなかった森でしたからね」
山菜取りに精を出すエステルたちを眺めながら、シャウナとトアはそんな会話をする。
今や要塞村の規模は一国の軍事力にさえ勝るほどの強大な規模になっていた。なんならこの場にいるシャウナひとりだけでも、本気になったら騎士団が総出になって飛びかかっても止めることはできないだろう。
そうなってくると、周辺の国家はおろか自国の中でさえ脅威と見られ、疎ましがられるところだが、少なくともセリウス王国のバーノン王は要塞村の存在を認め、共存共栄の道を行こうと考えていた。
おかげでトアたちは自由かつ平穏な日々を送ることができている。
「今や王を越えて女神にすら認められる村となったかなぁ。前に村を訪れたルクレシアのように、この要塞村とつながりを持とうとする者はこれからも後を絶たないだろう」
「村のためになるなら、俺は協力していきたいんですけどね……そのためにも、みんなの意見を聞いて慎重に物事を決めていきたいと思います」
「その気持ちがあるなら、大丈夫だろう」
シャウナはそれだけ言うと、エステルたちの方へと歩いていった。
トアもそれに続こうしたのだが、ふと要塞村にある神樹ヴェキラが目に入って足を止める。
「ここからでもハッキリ見えるんだな……」
改めてその巨大さを認識しつつ、あの村をこれからも守り続けていかなくてはという使命感が湧き上がってきた。
「トア~? どうしたの~?」
「なんでもない。今行くよ」
クラーラに呼ばれて、トアは駆けだす。
これからも要塞村を守っていくという誓いを胸に刻みながら。
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【この男’s(メンズ)の絆が尊い! 異世界小説コンテスト】に参加するため新作を投稿しました。
【悪役王子に転生して追放された俺は運命の相棒と出会う!】
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