第570話 魔導鉄道、開通② お披露目
ついに完成した魔導鉄道。
トアたちの住む要塞村の近くにも駅が設けられ、これまでよりも王都へ行きやすくなった。
王都だけではない。
近隣の都市への便もよくなって、要塞村を訪れる人は今後さらに増えるだろう。
鉄道の発車時刻など、残りは細かな調整のみとなっているが、正式な開通はまだ先になる見通しだ。
今回はとりあえずトアたち要塞村関係者へのお披露目という形になっている。
「さあ、こちらです」
スタンレーに案内されたその場所にあったのは――魔鉱石を原動力にして動く黒塗りの列車だった。
「「「「「おお!」」」」」
訪れたトア、エステル、クラーラ、マフレナ、ジャネットの五人は思わず叫ぶ。
設計図を入手した際に完成予想図を見ていたため、大きさや形状などはなんとなく頭に浮かんでいたのだが、こうして実物を目の当たりにするとその迫力に驚かされた。
「す、凄いです! これが本当に動くんですか!?」
「もちろん。ここからですと、王都が終点となりますね」
要塞村から先に線路は伸びていない。
つまり、王都から乗った人にとっては、この要塞村が終点となる。
スタンレーの話によれば、今回の開通はあくまでも第一弾であり、今後さらに線路を伸ばしていき、最終的には港町であるパーベルまで通すつもりらしい。
しかし、パーベルまで進むとなると、ここからさらに森の木を伐採したり、大きな岩を除去したり、長距離トンネルの工事に取りかからなければいけないなど、課題が山積みとなっており、当分の間は実現できないだろうと語った。
「しかし! この私が責任者をしている間には必ずパーベルとの道もつなげてみせます! これはもう私の人生をかけた一大プロジェクトなのです!」
鼻息荒く語ったスタンレー。
その気迫に押されつつも、要塞村の村長であるトアとしてはぜひとも成し遂げてもらいたい目標だと思った。
パーベルとの距離が縮まれば、要塞村の人たちが出かけやすくなるし、逆に他の町の人が要塞村を訪ねやすいだろうと考えたからだ。
「期待しています、スタンレーさん」
「必ずや応えてみせますよ!」
トアとスタンレーは固く握手を交わし、それから魔導列車の内部を見せてもらうことになった。
「こちらへどうぞ」
熱気溢れるスタンレーとは対照的に、助手であるラウラはいつもと変わらない様子。とはいえ、もともとあまり感情を表に出すタイプではないので、興奮していても外からは分からないだろう。
一方、トアたちは列車内に足を踏み入れてさらにテンションが上がる。
「これが……魔導列車……」
「凄く綺麗な内装ね」
「ホント……びっくりだわ」
「わふっ! 窓もいっぱいあって景色が見られます!」
「ただ移動するという目的以外にも、楽しめる要素があるのですね」
五人がそれぞれに感想を口にすると、
「では……実際に動かしてみましょうか」
スタンレーはいよいよ本題を口にした。
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