第568話 定期開催! 要塞村+αによる女子会!
トアが静かな夜を満喫している同時刻。
いつもより早く店じまいをしたエノドアにあるエルフ族のケーキ屋には、多くの女性が集まっている。
クラーラ、エステル、マフレナ、ジャネットの四人に加えて、ケーキ屋で働くエルフ族のメリッサとルイス、さらに自警団からネリス、モニカ、ミリアの三人が参加する女子会(お泊りあり)が行われていた。
「たまには女の子だけで過ごすっていうのも悪くないわよね」
「ふふふ、そうね」
クラーラとエステルのふたりは、メリッサ特製の果実ジュースを飲みながら楽しそうにお喋りをしている仲間たちを眺めている。
今回はメリッサからの提案により、仲の良い女性陣が集まってトークをしながら夜更かしをしようということになった。
内容は違うものの、それぞれ自分の仕事を持ち、日々を忙しく過ごしている。
その息抜きの意味も込めて企画されたのだが、それは大成功だったようだ。
普段、なかなか話せなかったりする者同士でも、この場の空気に乗っかっていろんなことをテーマに話し込んでいる。
「それにしても……トアさんに任せてきてしまって大丈夫でしょうか」
「わふぅ……心配です」
今回、トアは留守番で要塞村の見回りをひとりでしている。いつもは複数人で交代しながらするため、ジャネットやマフレナはその辺りを心配しているようだ。
しかし、今回の合同女子会の開催を後押ししてくれたのは他ならぬトア自身。
さらに、メリッサの子どもは夫であるセドリックが見てくれていたり、ネリスやミリアはクレイブやエドガーが町の巡回任務を交代してくれたり、さまざまな部分で協力をしてくれる者たちがいたからこそ実現できたのだ。
エステルやクラーラも、それをよく理解しているからトアたちに深く感謝している。
「なんか……こういうのっていいよね」
不意に、クラーラがそんなことを呟く。
「急にどうしたの?」
「あっ、いや……なんていうか、今みたいな日がずっと続いてくれたらいいのにって思えて」
「同感ね。――でも、エルフ族は人間よりずっと寿命が長いから、私はクラーラより先におばあちゃんになっちゃうわね」
「えっ? あっ――」
ここで、クラーラは種族間の違いに気づく。
「そういえばそうじゃない! ていうか、それってトアにも当てはまるわよね!」
「そ、そうね」
「う~ん……なんとかならないかしら」
「ローザさんに頼んで、寿命を延ばしてもらえるかもしれないけど……」
人間でありながらすでに数百年という時を生きているローザ。彼女は夫である勇者ヴィクトールを支えるため、禁忌の魔法に手をつけて長寿となった。
トアやエステルがクラーラたちと少しでも長く一緒に暮らそうとするなら、ローザに相談するのも手だろう。実際、ローザはトアにそれを提案し、返事を保留している。
「わふっ! 私もエステルちゃんやトア様とずっと一緒にいたいです!」
「私も同じ気持ちですよ」
「ありがとう、ふたりとも」
「ちょっと! 私も混ぜなさいよ!」
四人の中で、ひとつ答えが出た。
問題はトアのみ。
彼がどのような決断を下すのか――彼女たちはそれを待とうと決めたのだった。
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