第563話 クラーラの新しい力⑦ 神鉱石ゴールド・フォレスト
オーレムの森に隠された謎。
それを突きとめ、クラーラの剣を再生させる――トアたちはその目的を果たすために張り巡らされた巨木の根をよけ、奥へと進んでいく。
「まるでダンジョンね……」
「モンスターが襲ってくることはないのでしょうか……分かっていても、妙な緊張感がありますね」
エステルとジャネットが話すように、周りの雰囲気はダンジョンそのもの。しかし、ここはエルフたちが暮らすオーレムの森――聖なる魔力に守られ、ネズミサイズのモンスターさえ侵入ができない場所である。
本来、ダンジョンという場所に潜り込めばまずモンスターの襲来を警戒するが、このオーレムの森に関してはそのような心配など無用なのだ。
薄暗い道をひたすらに進むこと約十分。
特に変化はなかったのだが、
「うん?」
先頭を行くトアがついに異変をキャッチする。
「わふ? 何かありましたか、トア様」
「いや……あそこがなんだか光っているみたいなんだけど……」
トアの視線の先には、確かにぼんやりとした金色に輝く光がある。
「金色の光――もしかして、ゴールド・フォレスト!?」
探し求めていた神鉱石ゴールド・フォレストをついに発見――したかもしれないという興奮したトアは思わず駆けだし、それを追うようにして他のメンバーも走りだした。
やがてたどり着いたその場所は大きく開けており、中央には蔓が何層にも絡まって柱のようになっている。
さらにその蔓の柱の真ん中には、黄金に輝く巨大な鉱石が――これこそが、トアたちの探していた神鉱石ゴールド・フォレストであった。
「これは凄い……」
想像を絶する神々しさに、トアたちはその場に立ち尽くしていた。
それからしばらく見惚れて動けなかったのだが、ようやくトアがハッと我に返り、足元に転がっている神鉱石の欠片に手を伸ばす。それは微量ながらも魔力をまとっているが、明らかに一般的な魔鉱石とは質が異なる。
すでに入手しているふたつの神鉱石に近い感覚だった。
「間違いない――これがゴールド・フォレストだ!」
トアが叫ぶと、周りからも歓声があがる。
特にクラーラはこれで剣が復活すると確信し、目に涙を浮かべて喜んでいた。
神鉱石の欠片を持ち帰ったトアたちは、早速アルディに礼を告げてオーレムの森から要塞村へと戻る。
本当ならもう少しゆっくりしていきたいところではあったが、クラーラの大剣を復活させるためにジャネットをはじめとするドワーフ族たちとで打ち合わせをする必要があったため、剣が直ったら改めて訪問することを約束し、去っていった。
要塞村へ戻ると、すぐさまジャネットが工房に仲間たちを集め、修復するためのプランを円卓の間で話し合う。
「こいつは凄ぇ……」
「一世一代の大仕事になるな」
神鉱石を扱った仕事に怯む者もいたが、クラーラの落ち込みようを見てきたドワーフたちは奮起。
ついに、大剣復活に向けて本格的に始動するのだった。
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