第550話 みんな揃って

 未だに戻ってこない銀狼族を捜索するため、トアたちは白竜のシロに乗って大空へと飛び立った。


「みんな、落ちないように気をつけて」

「そういうトアこそ、落っこちないでよね」

「あぁ、気をつけるよ」


 落下に気をつけながら、銀狼族の足取りを追うために大陸の南側を目指して飛んでいく。

 しばらくすると、シロが何かを見つけたようで「グエー」と訴えるように吠える。


「シロ? 銀狼族を見つけたのか?」

「グエッ!」


 ドラゴンの言葉は理解しているわけではないが、必死に何度も吠えている姿を見て、銀狼族絡みの何かを発見したようだとトアは判断し、その場へ飛んでいくように声をかけた。


 シロは徐々に高度を下げていき、トアたちの肉眼でも地上の様子が見えるようになる。

 すると、今度はジャネットが叫んだ。


「トアさん! あそこにジンさんやマフレナさんたちがいますよ!」

「えっ!?」


 捜索中だった銀狼族を発見し、早速その場所へ。

 近づいていくと、向こうもトアたちの存在に気づいて手を振ったり声をかけたりしてアピールしていた。


 さらに接近していくと、銀狼族たちが足止めを食らっている理由が判明する。


「橋が落ちているじゃないか……」


 彼らの目の前には大きな川が流れているのだが、本来そこにあるべき橋がなくなっている。残骸と思われる木片などが辺りに散っているところを見ると、銀狼族たちが旅立ったあとに発生した強風によって破壊されてしまったようだ。


 近くに着陸すると、トアはジンやマフレナから詳しい事情を聞くことにした。


「大丈夫ですか、ジンさん、それにマフレナも」

「俺たちは問題ない。御覧の通り橋が壊れてしまっていてな」

「わふぅ……どうしようかずっと困っていたんです」

「ならもう安心よ。シロに乗っていけばあっという間に――あッ」

 

 そこで、クラーラは気がついた。

 広いシロの背中でも、さすがに銀狼族全員を乗せて要塞村に戻ることはできない。少なくとも十回以上は往復が必要となるだろう。


「橋の修理は後日、バーノン国王へ話すとして……みんなを今日中に戻すとなったらクロも一緒に呼んでこないといけないわね」

「あと、ローザさんにお願いしてラルゲたちをこちらへ向かわせましょう」


 エステルとジャネットはローザと連絡を取るために奔走。

 一方、トアとクラーラは女性と子どもを優先してシロへと乗せて先に要塞村へと返すため、案内を開始。

 疲れているだろうマフレナにも声をかけたが、


「私は……トア様やみんなと一緒に帰りたいです」

「マフレナ……」


 本人たっての希望により、マフレナはその場に残ることとなった。

 


 その後、合流したローザの協力もあって次々と要塞村へと戻っていく銀狼族の面々。

 最後に残ったジンとマフレナはトアたちと一緒にシロの背中に乗り込む。


「さて、帰ろうか」

「なんとか年越しには間に合いそうね」

「本当によかったわ……」

「マフレナさんも、ご苦労様でした」

「わふっ! みんなのおかげですよ」


 今年最後の夜が迫りくる中、トアたちは村民たちが帰りを待つ要塞村へ急ぐのだった。

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