第549話 年越し前のトラブル?

 村民たちが旅立ってから一週間。

 少しずつ故郷から戻ってきて、年越しの準備に入っていた。


「今年も一年が終わるわねぇ」

「本当ですねぇ」


 要塞村の中庭。

 オーレムの森から戻ったクラーラと、鋼の山から戻ったジャネット。ふたりはいよいよ数日後に迫った一年最後の日を前に、焚火で暖を取りながら和やかに話し込んでいた。


 一方、トアは戻ってきた各種族たちからの報告を受けると、名簿欄にチェックを入れていく――が、ここである事実に気づく。


「銀狼族がまだ帰ってきていない?」


 マフレナたち銀狼族が、まだ要塞村に戻ってきていなかった。


「何かあったのかな……」


 彼らの実力を考えたら、何者かに襲われたとは考えづらい。なので、どこかで寄り道をしているとか、遅れている理由は別にあるのだろう。


 その後も王虎族や人魚族など、次々と帰還の報告が相次いだが、結局その日に銀狼族が戻ってくることはなかった。

 念のため、トアはこの事態を報告すべく緊急の円卓会議を開くため、各種族の代表者たちに声をかけた。彼らもまた銀狼族の帰りが遅いのを気にかけており、すぐさま集まって今後の対策が話し合われる。


「これはさすがに何かあったのかもしれんのぅ」


 開口一番、ローザがそう告げる。

 さらに、王虎族のゼルエスからはすぐに捜索隊を結成して調査に乗りだした方がいいのではないかと提案を受けた。


「やはり、それしかなさそうですね」


 一応、フォルのサーチ能力を使って要塞村周辺を調べているが、未だに反応はない。そうなると、さらに範囲を広げる必要があると結論づけられた。


 この事態を受け、ローザの使い魔である怪鳥ラルゲや、ドラゴンのシロとクロ、さらにはユニコーンのユニも導入し、陸と空の二手に分かれて真夜中の大捜索を実行しようと決定。


 早速、それぞれが散って銀狼族の捜索に当たった。


「マフレナさん……」

「きっと大丈夫よ、ジャネット」

「そうよ。そのうち『わふっ! 道に迷っていました!』とか言って出てくるわよ」

「……そうですよね」


 不安げなジャネットをエステルとクラーラが励ます。

 

「よし……俺たちも捜索に出よう」


 全種族が揃って新しい年を迎えられるよう、銀狼族の捜索は本格的に始まるのだった。



 トアはエステル、クラーラ、ジャネットとともにドラゴンのシロの背中に乗って上空から銀狼族を捜すこととなった。

 一方、フォルは要塞村に残ってそのまま周辺を調査。

 さらに、トアが不在の間はシャウナが村長代理を務め、残っているみんなをまとめつつ、もしも銀狼族が帰還したらすぐに知らせる手筈をとった。


「星が綺麗ですねぇ……」

「こんな状況じゃなかったら心から楽しめるんだけどねぇ……」

「まあまあ」

「準備ができたぞ、三人とも」


 トアはエステルたちを引き連れてシロの背中に乗ると、そのまま一気に上昇。

 消息を絶った銀狼族たちを見つけるため、夜空へと舞い上がった。

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