第534話 魔虫族の知らせ【中編】
「魔虫族に――いや、ハンナにそんな特性があったなんて……」
メディーナからの報告を受けたトアは、クラーラとともに村長室のベッドへ寝かせたハンナへ視線を向けている。そこには三人以外にもエステル、ジャネット、マフレナ、そしてフォルの四人が集まっていた。
「しかし、激レアの昆虫というのはなかなか興味深いですね。そう思いませんか、ジャネット様」
「えっ!? い、いえ、私はその……」
「ジャネットは昆虫苦手だものね」
エステルからのフォローの通り、ジャネットはメンバーで唯一昆虫が苦手だった。
それはさておき、村長であるトアとしてはひとつ気になる点が。
「その昆虫だが――危険なのか?」
要塞村の村長として、それだけは知っておきたい情報だった。
「正直に申し上げますと……現段階では判断しかねます。ハンナ殿の触角から分かることは希少な昆虫がいることだけですので」
珍しい昆虫はいる。
だが、その危険性までは予測できない。
それがメディーナの答えだった。
「それはまた厄介だな」
「こうなったら、こっちから出張るしかないんじゃない?」
クラーラは周辺を調査して怪しい動きがないか確認してみるべきだと判断したようだ。
確かに、屍の森改め希望の森には要塞村以外にも白獅子のライオネルが長を務める獣人族の村や、鉄道を設置している作業員たちなど、多種族が大人数存在している。
彼らの安全を守るためにも、この問題は自分たちだけで抱えるものではないと判断したトアは、銀狼族の長であるジンと王虎族の長であるゼルエスを呼び、両種族から足自慢を数名集めて事態を周囲の町村や鉄道作業員たちに知らせるよう伝えた。
「了解した、トア村長」
「早速うちの若い者たちを向かわせよう」
ジンとゼルエスはそれぞれ人数と向かう場所を決め、それを伝えに走る。
さらに、残った者たちで近隣の森を調査することにした。
今回は下手をすると村の存亡にかかわる重大案件となり得るため、シロとクロのドラゴンコンビにユニコーンのユニも導入して辺りを調べ回った。
――それからほどなくして、
「マスター! メルビンさんたちモンスター組が件の昆虫を発見したようです!」
「よし! 行こう!」
メディーナの言うレア昆虫を最初に見つけたのは、オークのメルビンをリーダーとするモンスター組であった。
案内役として合流したゴブリンたちのあとを追い、トアたちがたどり着いた先にいたのは、
「な、なんてデカいんだ……」
見たことがないサイズのクワガタだった。
少なく見積もっても十メートルくらいはあるだろうか。
「こ、これが魔界産のクワガタなのか……?」
思わずメディーナへと視線を送るトアだが、
「えっ!? でっか!?」
メディーナもそのサイズにドン引きしていた。
どうやら、魔界でもこれくらいのサイズをした昆虫は滅多に見かけないらしい。
突如として希望の森に姿を見せた魔界生まれの超巨大クワガタ。
果たして、その目的は――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます