第511話 精霊議会③ トア、精霊界へ行く
ビセンテの案内で、アネスとともに精霊議会に参加することとなったトア。
本来、人間が精霊たちの集まる場に姿を見せることなどご法度だが、今回は諸々特殊な事情があったことと、精霊に限らず、多くの種族と共存し、今や世界的にその存在が認知されている要塞村の村長ということで特例と言う扱いになった。
そんなトアだが、心配事がないわけではない。
気にかかるのは――時の精霊ルドフィクスの存在だ。
以前、要塞村を危険視し、時の流れから外したルドフィクス。同じ日を一日中ループさせることで封印を試みたが、それはトアとローザの手によって阻止された。
今回、トアが精霊議会に足を運ぶことを知ったら――という不安を水の精霊王ビセンテに話すと、
「そのような事態にならぬよう、我々がフォローするから安心してくれ」
と、断言してくれる。
基本的に、精霊議会の場では争いごとを禁じている。
それを破るようなマネはさすがにしてこないだろうし、そのような行為に及んだ場合は他の精霊たちが黙っていない。精霊はルールに厳格なのだ、とビセンテは言い切る。
その言葉にひと安心しつつ、念のため警戒は怠らないようにしようと心に決めたトアは、あとのことをこれまでと同じく、村医であるケイスや市場の責任者を務めるナタリーに任せて要塞村をあとにした。
◇◇◇
精霊議会の場は、普通の人間では感知できない場所で行われるらしい。
ちなみに、移動手段はビセンテの水魔法によって生みだされた大きな泡の中に入り、そのまま要塞村近くの川を流れていくというものだった。
最初はこれで本当に到着できるのかと疑い気味のトアだったが、次第に周囲の景色が変化していくのを感じ、考えを改める。
「あれ? これって……屍の森じゃない?」
周りの風景は相変わらず木々が立ち並ぶ森の中――だが、要塞村で暮らし始めて数年が経過しているトアには、その森がまるで別の場所のように感じられた。
「さすがはトア村長だ。――君の言う通り、ここはすでに君の知る森ではない」
「ど、どういうことですか?」
「この泡はただ川を流れているわけではない。次元そのものを流れているのさ」
「えっ?」
「さあ、もうすぐ入るぞ――精霊界に」
精霊界。
初めて聞く存在だった。
「せ、精霊界ってどこなんですか!?」
「この世界と魔界のはざまにある世界……とでも言えばいいかな」
それはつまり、トアが足を踏み入れたことのない第三の世界だった。
精霊たちの世界へ向かうことを知ると、さすがに緊張の色が隠せなくなってくるトア。対照的に、アネスは落ち着いていた。
「だ、大丈夫か、アネス」
「問題ないよ。――むしろ、なんだか逆に心が落ち着いてくる感じがするの」
「アネスにとっては故郷でもあるからな」
そうだった。
人間の姿で長らく一緒に暮らしているから忘れがちだが、アネスは大地の精霊女王――この精霊界は慣れ親しんだ故郷なのだ。
「まもなく精霊界だ」
ビセンテがそう言った直後、突然の閃光がトアを襲う。
眩しさに思わず目を閉じる――やがてゆっくりと目を開けていくと、
「あっ!?」
そこには驚くべき光景が広がっていた。
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