第475話 新たな町・コステロ【前編】
この日、トアたちはバーノン王の悲願である王国鉄道実現のために頑張っている調査団のラウラに案内され、ある場所へと来ていた。
位置関係からすると、そこはセリウス王都と要塞村の中間にあたり、エルフたちの住むオーレムの森からも比較的近い。
そこではすでに土地が切り拓かれ、いくつかの建築物も見られた。
ここは鉄道が開通した際に、要塞村の次にとまる駅がある町――その名はコステロ。
物づくりの町として建設が進んでいる場所であった。
「凄いですね。もうこんなに建物があるなんて」
「今は駅や宿屋や町長宅など、必要な建物を優先して建築しています。鍛冶屋だったり、工房だったり、その辺りの建物は現在募集している希望者の要望や予算に合わせて進めていくつもりです」
トアの質問にスラスラと答えるラウラ。
後ろではついてきたクラーラ、ジャネット、フォル、シャウナの四人も興味深げに完成途中の町の光景を眺めていた。
特にジャネットは人一倍関心を抱いていた。
物づくりを生業としているドワーフ族である彼女にとって、ここはそれだけ魅力的な場所。実際、要塞村に住む数名のドワーフが、こちらの町への移住し、当面の間、サポートに回ることとなっている。
とはいえ、ジャネット自身はトアやクラーラ、エステルにマフレナといった村の仲間と離れて暮らすということは考えられないため、移住までは考えていない。
町の中を歩いていると、感心したようにシャウナが口を開く。
「それにしても、完成する前の町をこうして歩けるのはなかなか貴重な経験だね」
「僕らの数倍年齢を重ねたシャウナ様でも滅多にない経験とは……これは本当に貴重なのですね」
「フォル……何か言ったかな?」
「!?」
静かだが、珍しく怒りの感情をあらわにするシャウナ。
大概の話題には寛容な彼女でも、どうやら年齢ネタはNGらしい。
シャウナの新たな一面が垣間見えたところで、トアたちはさらに町を進んでいく。
規模としては、今のエノドアより少し小さいくらいか。
エノドアは魔鉱石の採掘量が安定してきた際に働き手である鉱夫を広く募集し、その時に町の拡張工事を行っているため、最初期に比べると町の規模も大きくなっている。
なので、初期のエノドアと比較して考えたトアだが、それでもこの町の規模は少し小さいなというのが正直な感想であった。
だが、その分、商店の数は比較にならないほど多い。
物づくりの町として運営していくというのがバーノン王の方針であるため、当たり前といえばそうなのだが、駅の件も含め、ここは商業都市というくくりに入るのだろう。
町の様子を見て回ったトアたちは、まだ完成前の村長宅へと来ていた。
まだ誰を村長にするのか決まってはいないが、バーノン王自らとある人物へ打診をしているらしい。
町長が誰なのか気になるところではあるが、今回トアたちが呼ばれたのは別件だ。
「それでは、例の件をお願いしても?」
「分かりました。それでは少し調べてみますね」
今回は町の視察という名目の他に、もうひとつ用事があった。
それは、町の近くにある森に巨大なモンスターが出現したという目撃情報があったことに始まる。
本来ならばセリウス騎士団が出張ってくるのだが、視察に来ることが決まっていたトアが自ら名乗りを挙げて、町の周辺の安全確保のために力を貸すと責任者であるスタンレーに報告したのだ。
そのスタンレーはバーノン王へ進捗状況を伝えるため、現在王都へ戻っており不在。
というわけで、トア率いる要塞村の面々は、早速森の中へモンスター討伐に出向いたのだった。
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