第474話 枯れ泉の魔女の受難
【お知らせ】
新作を投稿しました!
「引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて小国の離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896085495
メインテーマは【スローライフ&開拓】!
のんびりまったりしつつ、トラブルに巻き込まれてしまう主人公の明日はどっちだ!
※カクヨムコン7参加作品です。応援よろしくお願いいたします!<(_ _)>
…………………………………………………………………………………………………
鉱山の町エノドア。
魔鉱石の採掘が盛んになってから、人口が大幅に増加。それに伴い、町には小さな子どもも増えていた。
「賑やかになったなぁ、この町も」
「ホントよねぇ」
パトロールをしながら、人の増えた町並みを感慨深げに眺めていたのは自警団のエドガーとネリスのふたりだ。
フェルネンド王国を脱出した後、できて間もないこのエノドアへと移り住み、前職である聖騎隊として学んだことを生かすために自警団へと入った――いわば古参というわけだ。そんなふたりは、町に人が増えると同時に、自分たちへの責任が以前にも増していることを感じていた。
その時、
「む? エドガーにネリスか。ちょうどいいところであった」
聞き慣れた声に呼び止められる。
「ローザさん?」
「どうかしたんですかい?」
ふたりに話しかけたのは枯れ泉の魔女ことローザであった。
「実は、マフレナと一緒に銀狼族の子どもたちが欲しがっているというお菓子を買いに来たのじゃが……はぐれてしまってのぅ」
「そうだったんすね」
「残念ですが、私たちもマフレナは見ていません」
「そうじゃったか」
ふぅ、とため息をつくローザ。
すると、町に住む子どもたちが彼女のもとへと集まってきた。よく見ると全員女の子で、その瞳はなぜか揃ってキラキラと星空のように瞬いている。
「な、なんじゃ?」
異様な気配で近づいてくる女の子たちに、数多の戦場を駆け抜け、帝国壊滅に貢献した八極のひとり――ローザ・バンテンシュタインをたじろがせた。
やがて、ひとりの少女がローザを指さして叫んだ。
「魔女っ子レインちゃんだ!」
「……何?」
目が点になるローザ、エドガー、ネリスの三人。
「お、おいおい、この御方はそんな珍奇な名前じゃなくて――」
「待って、エドガー。その魔女っ娘レインちゃんってもしかして……」
ネリスにはその名に心当たりがあるようで、ゆっくりと視線がある店へと向けられる。それはエノドアで唯一の書店であり、店先に掲げられている小さな黒板には「【魔女っ娘レイン】最新刊入荷」の文字が躍っている。
「あぁ! 最近子どもたちに人気だっていう児童書!」
「それが魔女っ娘レイン。主人公のレインの格好は……十歳前後の年齢に黒のローブと黒のとんがり帽子。そして鮮やかなピンクヘアー」
「まんまローザさんじゃねぇか!」
そう。
子どもたちに大人気の児童書【魔女っ娘レイン】の主人公は、見た目がローザにそっくりだったのだ。
「な、なんじゃと……」
愕然とするローザ。
そんな様子を尻目に、子どもたちはローザへとにじり寄ってくる。皆、ローザが本物のレインだと思っているのだ。
「ねぇねぇ! 魔法見せて!」
「悪いドラゴンをやっつけた炎の矢がいい!」
「それより、皆を困らせる王様をこらしめた雷の剣だよ!」
次々と飛びだす子どもたちからのリクエスト。
なまじ、すべての要求を自身の魔法で叶えてやることができるので、無駄に葛藤してしまうローザであった。
その後、「要塞村に本物の魔女っ娘レインがいる」という噂はあっという間にエノドア中に広まった。やがてそれはセリウス王都まで届くこととなり、魔女っ娘レインのブームはさらにその熱量を加速させていったのだった。
「あの、ローザさん」
「なんじゃ、トア」
「最近、ローザさんと同じ格好をしている女の子が増えたみたいなんですけど……」
「ワシは何も知らんからな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます