第449話 霧の館の魔法使い③ 怪しい影
「エドガー? どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもねぇよ――見つけたんだ!」
「見つけたって……子どもたちか!?」
「そうだよ! いたんだよ!」
興奮気味に話すエドガー。
そんな騒がしさに気づいたマフレナがやってきた。
「わふっ? 何かあったんですか?」
「おっ! いいところに来たな、クラーラ!」
「? 私はマフレナですよ?」
「おっと、そうだった! すまねぇ! 興奮していて間違えたんだ!」
エドガーはすぐにでもその場所へ向かおうとトアの腕を掴む。マフレナも同行しようとふたりのあとをついていこうとするが、
「マフレナ! 悪いが他の連中を呼びに行ってくれないか? 人手が必要なんだ!」
「わふっ?」
「いいだろ、トア」
「あ、ああ……マフレナ、ジェンソン団長に知らせてきてくれ。君の足なら、すぐにみんなのところへたどり着けるはずだ。俺とエドガーで先行する」
「わふっ! 了解です!」
トアから指示を受けたマフレナは、大急ぎでジェンソン団長のもとへと走っていった。
「行こう、トア! この先だ!」
「おう!」
エドガーの案内で、トアは失踪した子どもたちがいるという場所へと向かった。
「こ、これは……」
案内された場所にあったのは――廃墟だった。
かつては名のある貴族が使っていた館だったのだろうが、今ではその面影もない。あるのは無駄な広さくらいか。
「ファグナス様が以前使っていた館か……? いや、それにしては古すぎる」
「おい! あそこを見ろ!」
トアが館の分析をしていると、エドガーが二階の東側にある窓を指さす。
そこには、三人の子どもの姿があった。
皆、魂が抜けたようにボーっと空を眺めている。
「あれが……失踪した子どもたちか」
「そうだ! すぐに助けに行こう!」
「ああ!」
子どもたちの姿を発見したトアとエドガーは館の中へと突入した。
◇◇◇
トアたちが屋敷へと入ったと同時刻。
増援を呼ぶように頼まれたマフレナは、その足を生かしてすぐさまジェンソン団長のもとへとたどり着いた。
「どうしたんだ、マフレナ?」
「わふっ! エドガーくんが子どもたちを見つけました!」
「何っ!? 本当か!?」
「今、トア様と一緒に――」
「子どもたちが見つかったって!?」
ジェンソン団長とマフレナが話していると、近くにいた自警団の面々が集まってきた――のだが、そこにはこの場にいてはいけない人物もいた。
「さすがはトアだな!」
「相変わらず凄いですね、トア村長殿は」
「まあ、お兄様が認めた数少ない人物ですからね。それくらいやってくれなければ困ります」
現れたのはエドガー、タマキ、ミリアの三人。
その中でも、マフレナの視線はエドガーに注がれた。
「うん? どうした、マフレナ」
「エドガー殿をジッと見つめて……何かやらかしたんですか?」
「うわっ……控え目に言って最低ですね」
「辛辣だな、おい!」
パニックになってうまく言葉の出ないマフレナに代わり、団長のジェンソンが事態を説明していく。
「マフレナはエドガーが子どもたちを見つけたと言っていたんだ」
「俺が? 俺はずっとタマキたちとこの辺りを捜索していて、トアには会っていないぜ?」
「ですよね……どういうことでしょうか?」
「……決まっています」
ミリアは状況を察し、自らの考えを口にする。
「その女好きのエドガー先輩は偽物ということですよ。恐らく……そいつが子どもたちをさらった張本人」
「女好きの部分必要だったか!?」
「わふっ……そ、それじゃあ――」
「トア村長が危ないぞ!」
ジェンソンはすぐにタマキとエドガーに捜索隊を集めるよう指示し、自身とミリアはマフレナとともにトアのいた場所へと向かう。
その場所を特定したら、場所を知らせるため信号弾を空へ打ち上げる段取りを決めて、それぞれ分かれた。
「トア様ぁ!」
「トア村長ぉ!」
「……トア・マクレイグがいなくなったら、お兄様は悲しむだろうし……癪だけど、今回だけは特別に援護してやろうかしら」
それぞれの想いを胸に、マフレナたちを森を駆ける。
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