第448話 霧の館の魔法使い② 協力要請
要塞村――村長室。
「そうか……そこまで深刻な問題になっていたなんて……俺たちがもっと早く協力を申し出ていれば……」
「いや、トアたちのせいじゃない」
「そうよ。……すべては私たち自警団のせいだわ」
「これこれ、そう思い詰めるな。ワシらが協力をすればすぐに見つかる」
「そうよ、ネリス。それにクレイブくんも。みんなで力を合わせて、いなくなった子どもたちを捜しましょう?」
「ありがとう、エステル」
「……エステルの言う通りだな」
子どもたちの捜索に協力をしてほしいと要塞村へやってきたネリスとクレイブは、自分たちのせいだと責任を感じているようだった。
だが、自警団のメンバーは決して無能ではない。
特に、かつてフェルネンド王国聖騎隊の養成学校でともに過ごした面々については、その実力をよく知っている。おまけに、今回の案件にはセリウス王国騎士団まで絡んできているというわけだから、少しキナ臭さを感じていた。
「……ただの失踪事件じゃなさそうですよね」
「トアもそう思うか」
「まあ……すんなり解決しそうにはなさそうだな」
ローザとシャウナもトアと同じ考えだった。
トアは、この事態を他人事のように捉えてはいない。
なぜなら、エノドアの子どもたちが消えたという場所は、要塞村からそれほど離れた位置ではない。もしかしたら、次に姿を消すのは要塞村の子どもたちかもしれないのだ。
そう思うと、子どもたちの安否はもちろん、要塞村の村民を守るためにも早急に解決する必要があるという結論に至った。
「ともかく、子どもたちを見つけだすことが先決だ。――フォル、それとマフレナ」
「はい」
「わふっ!」
「銀狼族と王虎族の若い衆に子どもたちが消えた森の場所を教えて、捜索に向かわせてくれ」
「分かりました。そのように伝えます」
「私も一緒に捜しに行きます!」
トアからの指示を受けたフォルとマフレナは、急いで村長室を出ていった。
「ジャネットとクラーラは村の子どもたちを図書館にある教室に集めてくれ。全員いることを確認できたら、その場で警備を頼む」
「分かりました!」
「了解よ!」
「トア村長。私は先に獣人族の村へ行き、ライオネルへこのことを知らせてくる。あそこにも子どもはたくさんいるからな」
「お願いします、シャウナさん」
「うむ。では、ワシとエステルはトアとともに捜索隊へ合流するとしようかのぅ」
それぞれの活動がハッキリしたところで、トアたちは持ち場へと散っていった。
トア、ローザ、エステルの三人は、クレイブとネリスの案内で子どもたちがいなくなったという地点まで移動。
そこは何の変哲もない森の中だった。
「この周辺では、騎士団や自警団による捜索が続いている」
「でも、なんの手がかりも得られないの」
「なるほど……」
確かに、森の中には多くの人間の気配を感じた。
しばらくすると、マフレナとフォルが合流。
銀狼族や王虎族も駆けつけ、捜索隊の数はさらに膨れ上がっていった。
トアたちも手分けして捜してはいるものの、未だに情報はゼロ。
完全に手詰まりの状態だった。
「一体……どこへ行ったっていうんだ……」
額の汗を腕で拭いながら、必死の捜索が続く。
すると、
「おい! トア!」
木々の間から、エドガーが血相を変えて飛びだしてきた。
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