第450話 霧の館の魔法使い④ 最後のひとり

【お知らせ】


 新作を投稿しました!


「ダンジョン・ファーム ~家を追い出されたので、ダンジョンに農場をつくって暮らそうと思います~」


https://kakuyomu.jp/works/16816452219389978278



 今回は過去作のリメイクではなく完全新作となっております!

 スローライフものなので、お好きな方はぜひ!

 そうでない方も、ハーレムや成り上がり好きの片もぜひ!

 どれも好きじゃないという方もぜひ一度ご覧あれ!



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※第440話の修正版はこの週末にあげ直す予定です!





 トアが偽エドガーとともに消えたという一報は、あっという間に捜索隊の間に広まった。


「こうしちゃいられないわ! すぐにでもトアを追うわよ!」


 躍起になるクラーラ。

 一方、そんなクラーラと一緒に子どもたちの捜索をしていたローザとシャウナは神妙な面持ちで話し合っていた。


「ローザ……」

「うむ……一瞬じゃが、あの女の気配を感じたな」

「な、何かあったんですか?」

 

 いつも余裕のある態度をしているローザとシャウナのふたりが、真面目な雰囲気を醸しだしている。ふたりと長い付き合いのあるクラーラは、それだけで尋常ではない事態が起きていると感じ取った。


「クラーラよ。今回は多少覚悟が必要かもしれん」

「えっ? そ、それって……トアのことですか!?」

「あぁ。私とローザの予想が正しければ、エドガーに化けてトア村長を誘いだした者は相当な実力者だ。――私たち八極と遜色ないと言って過言ではないな」

「ふむぅ……さすがのトアも、今回ばかりは苦戦必至とみていいじゃろう」

「!?」


 かつて、港町パーベルでヴィクトールと戦った経験のあるクラーラは、本気になった八極がどれほどの実力を持っているか、身をもって知っている。

 ゆえに、ふたりがこれほど警戒している今回の事件の黒幕らしき人物がいかに危険であるかはすぐに想像がついた。


「だ、誰なんですか、その人!」

「彼女の名はカラム・ブレイクリー……枯れ泉の魔女ローザや旧帝国の魔法研究者でフォルの生みの親であるレラ・ハミルトンと並んで、世界三大魔法使いに数えられる実力者だ」


 シャウナの口から語られた、黒幕と思われる人物の素性。

 それを知ったクラーラは顔をひきつらせた。


「だ、だったら、すぐに助けに行かないと!」

「むろんじゃ。――今、捜しておる」


 取り乱すクラーラとは対照的に、ローザは落ち着いた様子で魔力を錬成していた。


「本当にヤツが黒幕だとするなら、狙いは神樹の魔力じゃろうな」

「同感だ。……しかし――」

「みなまで言うな、シャウナ。ワシも同じ気持ちじゃ」

「やっぱりか」

「ちょ、ちょっと待ってください! ふたりだけで納得しないでくださいよ!」


 事件の核心について、何かを悟ったふたりに対し、未だ何も掴めていないクラーラは事情を説明してくれと猛抗議。


「悪いのぅ、クラーラ。ちょっと説明している時間はなさそうじゃ」


 黒いとんがり帽子をかぶり直すローザ。さらに、


「私も……事と次第によっては、久しぶりに全力で戦わざるを得ないようだ」


 シャウナまでもが本気モードに入っていた。

 こうして、三人は他の捜索隊よりも少し早く、事件解決のためトアのあとを追うのだった。


  ◇◇◇


 捜索隊が慌てふためいている頃、トアは館の内部へと足を踏み入れていた。


「中はボロボロだな」


 気をつけながら進むトア。

 ――だが、その背後にはエドガーに化けている何者かの姿もあった。


「…………」


 エドガーに成りすましたその者が、トアへゆっくりと近づく――が、


「……ようやく本性を見せたか」


 突然トアが振り返り、偽エドガーへと言い放つ。

 驚いた偽エドガーは、それでも演技を続けようとした。


「な、何を言っているんだよ、トア」

「誤魔化しはきかない」


 トアは確信していた。

 敵のアジトを特定するため、あえて引っかかったフリをしていたのだ。


「どこの誰かは知らないけど――あんたは大きなミスをひとつ犯した」

「何っ!?」

「エドガーは……いついかなる状況でも、女性の名前だけは間違えたりしない!」


 相手が仕掛けるよりも先に、トアは聖剣エンディバルを抜いた。

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