第438話 夜の集い

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 ホルバートの招待状に書かれた集合場所。

 それはエノドアにある食堂だった。


 普段は鉱夫たちが仕事終わりに立ち寄る店だが、今日はどうも様子が異なる。

 指名されたトアとエステルがその店の前までやってくると、


「時間ピッタリね」


 ネリスが待っていた。


「ネリス? 君もホルバートに招待されたのか?」

「えぇ」

「……もしかして、クレイブやエドガーも?」

「中で待っているわ。あと、ヘルミーナさんも」

「「ヘルミーナさんまで!?」」


 意外な人選だった。

 しかし、同時に呼ばれた人間の関連性がハッキリする。


「もしかして……元聖騎隊のメンバーを集めたの?」

「そういうこと。言ってみれば、これは同窓会よ」

「なるほどね」

「まあ、正直、今となっては思い出したくないこともあるけど……一緒になって努力していたあの時間を無駄だとは思いたくないし」


 ネリスの言葉に、トアとエステルは深く同意する。

 フェルネンド王国聖騎隊。

 トアにとっては、《洋裁職人》という誤ったジョブを診断され、エステルは貴族であるディオニス・コルナルドに目を付けられるなど、ふたりにとってはいい思い出ばかりとは呼べない聖騎隊時代。


 それでも、ネリスの言う通り、訓練兵時代はさまざまな思い出がある。

 そもそも、あそこにいなければネリス、クレイブ、エドガーたちとも会えなかったのだ。


「さあ、もうみんな揃っているから入りましょう」

「ああ」

「うん」


 トアとエステルはネリスの案内で本日貸し切りとなっている店内へ。


「よく来たな!」


 早速、偉そうな口ぶりでホルバートがふたりを迎えた。


「今日はお誘いありがとう、ホルバート」

「こんな機会は今までになかったから楽しみだわ」

「喜んでもらえて何よりだよ!」


 すでにテンションが限界値を超えていそうなホルバート。

 とりあえず、メンバーが全員集まったところで、主催者であるそのホルバートが代表してあいさつをすることに。


「諸君! すでにフェルネンド王国はあってないようなものだが! 我らの友情は永久に消えることなどない!」


 高らかに宣言するホルバート。


「って、あいつとは訓練校時代からあまり接点ないんだがな」

「そう言うな、エドガー。……思えば、聖騎隊組でゆっくりと話をする機会など、エノドアの自警団に入ってからしたことがなかったな」

「まあ、忙しいっていうのもあるし、その気になればすぐに会える距離にいたからな」

「辛気臭い顔をするな、エドガー! 今日はとことん飲むぞ!」

 

 唯一の成人であるヘルミーナは、すでにだいぶ出来上がっていた。


「ヘルミーナさん……すでに飲みすぎでは?」

「おまえたちの立派な成長ぶりをこうして間近で見ることができて……私は嬉しいんだよ、クレイブ!」

「どうやら、ヘルミーナさんは気に入っていただけたようだ」

「最高だ! よくぞこの会を開いてくれた――マイケル!」

「ホルバートです! ホルバート・ガーベル!」


 大盛り上がりの四人を眺めながら、トア、エステル、ネリスの三人はのんびりとこれまでを振り返っていた。


「本当に……いろいろあったわよねぇ」

「よくぞここまで来られたなっていうのが正直な感想だよ」

「私も……フェルネンドから出た直後は、『もしかしたら、もう一生トアに会えないかもしれない』って思ったくらいだし」

「あの時のエステルは大変だったわよ。常に悲壮感が漂っていて」

「へぇ~」

「も、もう! ネリス!」


 要塞村ができる前からの付き合いである聖騎隊組での同窓会。

 それは大変好評を博し、次回以降もホルバートが中心となって定期開催されることとなったのだった。

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