第432話 マフレナの異変② 情報収集
マフレナがエノドアで名うてのギャンブラー・バリーをポーカーで打ち負かした日の夜。
その対決に同席したクラーラからの呼びかけで、要塞村に暮らす各種族の代表者たちが円卓間に集まり、緊急の村民会議が開かれた。
議題はもちろん、マフレナの変化について。
クラーラはポーカー対決をしていた時のマフレナはまるで別人のようだったと証言した――すると、これに追随する村民が数名現れる。
「確かに……ちょっと違うなって感じがしましたね」
「いつも通り元気なのだが……その……テンションが違うというか」
「あたしもそう感じたわ」
人魚族代表のルーシー、王虎族代表のゼルエル、村医ケイスの三人がそう訴えた。
それに対し、険しい表情を浮かべるのはローザとシャウナの八極ふたり。
「ただの気まぐれということではないようじゃのぅ」
「あのマフレナがそのようなマネをするとは考えづらいしねぇ」
まったくもって見当がつかないマフレナの変化。
だが、実害が出ているわけではないし、もう一日様子を見てから判断するということでその日は解散となった。
◇◇◇
翌朝。
「わふっ! おはようございます!」
朝から元気いっぱいのマフレナ。
その姿はいつも見慣れているマフレナの姿そのままだった。
「どうやら、思い過ごしだったみたいね」
「ああ」
「よかったです♪」
エステル、トア、ジャネットはホッと胸を撫でおろしている――が、ただひとり、昨日実際にマフレナのポーカー勝負に立ち会ったクラーラだけは別だった。
「……でも、昨日のクラーラは……」
未だに疑念が残っている。
むろん、トアたちもこれですべてが解決したとは思っていない。
なぜなら、マフレナにはバリーと戦った記憶がなかったのだ。
その日、トアは朝の見回りを終えると、クラーラを連れてエノドアへと出向き、バリーとマフレナの戦いを目撃したエドガーから情報を集めることにした。
「あぁ……確かにちょっとおかしかったな」
「具体的に、どんな感じだった?」
「なんつーか……別人、みたいな?」
「それだと私が持って帰った情報と一緒じゃない。他に何か気づかなかったの?」
「んなこと言われてもなぁ――あっ」
「何か思いだした?」
エドガーは何かを思い出したようで、ポンと手を叩いた。
「マフレナの性格が変わったことと直接関係はないのかもしれないが……あの時のマフレナはまるで数年経過した大人の女って感じがしたな」
「大人の女?」
トアはピンとこなかったようだが、
「言われてみれば……確かに、あの時のマフレナは大人っぽい雰囲気だったわね」
クラーラには通じるものがあったらしい。
結局、その日はこれ以上に詳しい情報は得られず、日暮れが近づいて来た頃にふたりは要塞村へと帰っていった。
――最大の異変は、その日の夜にやってきた。
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