第392話 ジャネット母登場!① 救出作戦開始!
エノドア鉱山での落盤事故。
この一報は、すぐに要塞村にも伝わり、村長トアはすぐさま銀狼族や王虎族の身体能力が高い若者たちを中心に支援部隊を編制。自らが先頭となり、救出活動をするためエノドア鉱山に急行した。
――一方、その噂はすぐに鋼の山にも伝わっていた。
エノドア鉱山で採れる上質な魔鉱石は、鋼の山のドワーフたちにも認められており、定期的に買いつけを行っていたのだ。落盤事故が起きたのは、偶然にも多くのドワーフたちが買いつけのために山を訪れていた日だった。
そのため、鋼の山のドワーフたちをまとめる八極のひとりで、ジャネットの父親である鉄腕のガドゲルの耳にも届いた。
「エノドアで落盤だと!? 被害はどうなっている!?」
「詳細はまだ分かりません……ですが、多くの鉱夫が閉じ込められているという情報があります」
「なんてことだ……すぐに救出へ向かう!」
エノドアには世話になっている、とガドゲルは自ら救出活動に乗り出した。
と、その時、一報を伝えに戻ったドワーフから、気になる情報が。
「お、親方……実は、鉱山にはあの方もいらっしゃったようです」
「あの方? 勿体ぶった言い方をしないで伝えろ。誰だ?」
「……エマ様です」
「!? エマだと!?」
思わずガドゲルは声を荒げた。
「本当なのか、それは!」
「は、はい。直接見かけたわけではありませんが……落盤が起きる前に鉱夫たちがそんな噂をしていました。数日前から、やたら魔鉱石に詳しい片眼鏡で紫色の長い髪をしたドワーフ族の美人が出入りしている、と」
「……エマに間違いない」
ガドゲルは断言すると、手近にあった巨大な斧を手に取った。
「エマがいるなら、尚更俺が行かねぇと……女房をほったらかしにしておくわけにはいかんからな」
「俺たちも行きます、親方!」
ガドゲルの言葉をきっかけに、周囲のドワーフたちが次々に「俺も行きます!」と救出に志願する。
「よし! 行くぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
気合十分のドワーフたちはエノドア鉱山を目指す。
◇◇◇
エノドア鉱山落盤事故現場は混乱していた。
現場近くで作業していた鉱夫によると、原因は突如出現した大型モンスターが暴れたためだという。
モンスター対策として、巨大モグラ型モンスターのアレックスが常駐しているのだが、そのアレックスでも止められないほど強いモンスターだった。
これにより、アレックスも重傷を負い、今は治療を行っている。
そのモンスターはその後姿を消したようで、いつ現れるか不明――それが、救出作業を遅らせる原因になっていた。
「クソっ! どうすることもできんとは……」
鉱夫たちをまとめる鉱夫長のシュルツは、崩れ落ちた岩壁の向こう側にいる仲間を救おうにも、手も足も出せない現状に苛立っていた。
「シュルツ殿!」
そこへ、ヘルミーナ率いる自警団が到着。
それから少し経過して、
「シュルツさん!」
トア率いる要塞村組が合流した。
その後、シュルツがそれぞれ代表者に事情を説明。
大きな音を立ててモンスターを刺激してしまうと、また暴れだしてしまう可能性があるとして、トアはモンスターを現場から離れた位置におびき出す作戦を提案する。
「そ、そんなことが可能なのか?」
訝しがるヘルミーナだが、トアには秘策があった。
「フォルなら可能です」
「ど、どういうことだ?」
疑問を投げかけたシュルツへ、今度はジャネットが答える。
「こんなこともあろうかと、フォルにはモンスターをおびき出せる誘導魔力を出す新機能を追加しておきました」
「……ますます戦闘用から遠ざかっているな」
「恐縮です」
シュルツと微妙に噛み合わない会話を披露した後、フォルは早速サーチ機能でモンスターの場所を特定し、誘導魔力で現場から遠ざける作戦を実行に移した。
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