第284話 屍の森の新しい村

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WEB版とは違った展開で描かれる要塞村の日常!


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お楽しみに!


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 プレストンたちを撃退したトアは、フェルネンド王国の兵士が密かにセリウス入りをしているという一報を大至急バーノン第一王子へ伝えるため、一度村へ戻り、事情をローザに説明してから、使い魔を通して手紙をセリウス城へと届けた。


 一応、直接会っての報告も視野に入れているが、今はグウィン族をすぐにでも屍の森へ移住させることが先決だとして、要塞村からの応援も連れて再びアーストン高原へと戻った。


 グウィン族の人々は、自分たちがフェルネンド王国聖騎隊に狙われていることに驚いていたようだった。

 フェルネンドの兵が国境付近に集結しつつあることで、気を引き締めているセリウス王国騎士団。その警戒網をかいくぐるのは並大抵のことではないと思うので、大軍隊が押し寄せてくるということはないのだろうが、念のため、一族すべてを移住させるというトアの提案に、長のダルトーは首を縦へと振ったのだった。



 

 その後、グウィン族の移住は思ったよりも早く終了。

 すでにトアをはじめとするエステルなどの村民の存在を認識していたとあって、反対意見は出ず、スムーズにテントをたたみ、移動用に連れてきたローザの使い魔である巨鳥ラルゲ(全部で二十羽)の背に乗せて出発した。


 グウィン族の居住エリアは、獣人族の村の近くに決まった。

 ここならば、要塞村からも近いので、異変が起きた際、すぐに対応ができるし、近くには白獅子のライオネル率いる獣人族たちもいる。


 早速、トアは獣人族の村を訪ねてライオネルに事情を説明。

 心優しいライオネルはグウィン族の事情を知ると、快く協力要請を受け入れてくれた。


 こうして、緊急的にではあるが、グウィン族の受け入れ態勢は恐ろしいほど短期間で整ったのだった。




「トア村長……本当に、なんとお礼を言っていいやら」

「困った時はお互い様ですよ」


 ダルトーはトアへ深い感謝の言葉を述べる。

 グウィン族の民すべてが屍の森に到着する頃には、すでに夜となっていた。

 ――で、やはりというか、そのまま夜はリスティやウェインといった獣人族の村の民も加わって、グウィン族を歓迎する宴が行われた。


 これまで、一族以外の種族とは関わってこなかったグウィン族の人々だが、この日の宴会は誰もが心から楽しいと思える賑やかなものとなったのだった。



  ◇◇◇



 翌朝から、グウィン族の新しい生活が始まった。

 そのサポートをするため、トアは朝から数人の村民を率いて新しいグウィン族の村を訪れていた。

 彼らは高原に住む草食動物を狩っていたため、この屍の森に金牛や翡翠豚がいることを知らされると、狩り担当の若い男たちは瞳を輝かせながら武器を手に取り、森の奥へと足を踏み入れていった。

 また、物資を提供してくれた商人数名も同行していたのだが、彼らはグウィン族の女性が作る手製のアクセサリーに興味を抱いていた。

 独特の色彩センスに個性的な形状――これは売れると思ったらしく、うちの店で出さないかと願い出る者が続出したのだ。


 最初は戸惑っていたグウィン族の女性たち。

 しかし、商人たちの熱意と、要塞村での宴会を通してもっと多くの人々と交流を持ちたいという意識が強まったことで、長に相談し、要塞市場に品を出す運びとなった。




 グウィン族が徐々に要塞村をはじめ、他の種族と交流を深めていく一方、トアは守護竜シロの背中に乗ってセリウス王都を訪れた。

 目的はバーノン王子への報告だ。

 次期国王最有力候補者というだけあって、多忙を極めるバーノンだったが、トアの来訪を受けて予定していた会議を延期し、急遽時間を作ってくれた。


「すみません、急に押しかけてしまって」

「構わない。むしろありがたいくらいだ。手紙を読んだが……すでにフェルネンドの兵が潜り込んでいたとは……」


 バーノンは心底悔しそうな声をあげる。

 こうなってくると、国境付近に展開しているフェルネンドの軍勢はブラフである可能性も出てきた。しかし、かといって兵を散らし、国内に潜伏したかもしれないフェルネンドの兵を探すとなると、隙ができ、そこを突かれる恐れもあった。


 とりあえず、セリウス国内の各領主へ、今回の事件の概要を記した書簡を送り、各自警戒態勢を怠らぬよう指示を出した。この各領主から、それぞれの町や村を守る自警団といった組織にも連絡が行くことだろう。


 今できる最善策としては、これが限界だろう。


 要塞村としては、戦争に加担するようなマネは避けたい。

 ただ、今回起きたプレストンたちの襲撃のように、突発的に発生した緊急事態においてはその勢力を退けるくらいの戦闘を行う――あくまでも自衛のためであることを強調し、バーノンもそれを了承した。


 話に区切りがつくと、ちょうど側近の兵が「王子、そろそろ」と次の会議へ出席するように促しに来た。


「慌ただしくて申し訳ないな」

「いえ、こちらこそ、急な来訪ですみませんでした」

「緊急事態なのだから致し方あるまい。今度また時間を作ってゆっくりと村の近況などを聞きたいな」

「はい! 是非!」


 再会を約束し、トアは城をあとにする。



 こうして、屍の森には獣人族の村に続き、新たな村が誕生したのだった。

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