第278話 大空の旅路
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ココの一族が暮らすアーストン高原へ向けて、旅立つ日の朝が来た。
移動手段は諸々の安全を考慮して、守護竜シロの背中に乗っていくこととなり、それに伴って母親役を務めるマフレナも同行することとなった。
さらに、考古学だけでなく民俗学にも精通しているシャウナ。
万能な魔法使いとしてエステル。
そしてフォルという人選になった。
今回はあくまでも物資の提供ということで、最小限の人員にしようと考えた結果だった。
シロの背中に荷物を括りつけ、そこにトア、マフレナ、エステル、シャウナ、フォル、そしてココの六人を乗せ、アーストン高原を目指す。
「それじゃあ、行ってきます」
「うむ。留守は任せるといい」
「無茶しちゃダメよ、トア」
「気をつけてください」
ローザ、クラーラ、ジャネット――そして、村民たちに見守られて、トアたちを乗せたシロは大空へ羽ばたいた。
「市場がオープンして間もないというのに忙しないな、村長」
イタズラっぽく笑っているのはシャウナだ。
「俺がいなくても、ナタリーさんがうまく仕切ってくれるでしょうし、戦力的にはこっちよりもずっと強いですよ」
これまで、要塞村の村長として村民たちの先頭に立ってきたトア。だが、ケイスやナタリーといった頼りになる存在が増えたことで、自分のしたいことに時間を割くことができるようになっていた。
「アーストン高原のグウィン族……名前くらいは聞いたことあるけど、一体どんな人たちなのかしら」
「わふぅ……私も知らないです」
「みなさんとそんなに変わらないですよ」
――昨夜。
市場初日の打ち上げということで、盛大な宴会が行われたが、その場でココの紹介も同時に行った。
状況が状況だけに、最初は戸惑っていたココだが、宴会の楽しい雰囲気が徐々にその硬さをほぐしていき、最後の方は年の近いクラーラ、エステル、ジャネット、マフレナの四人とすっかり意気投合していた。
ココの身の上を知った四人は協力することを固く誓う。さらに、事態が落ち着いたら、もう一度この要塞村を訪ねてほしいとお願いした。
この申し出に、ココも喜んで頷く。
どうも、現在のグウィン族に彼女と年齢の近い者は少ないらしく、エステルたちと親交を深められるのは嬉しいらしい。
いっそ村に住んでみてはどうかと、冗談半分にシャウナが尋ねてみたが、ケイスが予想した通り、ココは一族の長の娘であった。そのため、父に代わって一族をまとめる役は自分に回ってくるだろうから、要塞村には住めないのだという。
とはいえ、遊牧民であるグウィン族は、同じ場所に定住することはない。そのため、生活の場を要塞村の近くへ移すことはできるかもしれないと語った。
「屍の森には危険なモンスターがいっぱいいるって聞いたけど……」
「以前に比べたら、数はだいぶ減ったかな。たまに、昨日ココを襲った地中鮫みたいなのが出てくるけど、うちの村民ならたぶん倒せる人の方が多いかな」
伝説的種族ばかりで構成された要塞村の村民ならば、あの程度のモンスターなど目じゃないだろう。
「そうなんだ……」
「わっふぅ! ココちゃんのグウィン族も、要塞村の近くに来ればいいですよ!」
「獣人族の村もあるし、案外住めば快適かもよ?」
「う~ん……」
本気で悩みだしたココ。
この調子なら、本当に要塞村の近くに居着きそうだ。
と、その時、
「楽しいトークタイムを邪魔して申し訳ないが……目的地が見えてきたぞ」
シャウナからの報告を受けて、全員、視線を前方へと移す。そこには、なだらかな傾斜がある大草原が広がり、その一部にいくつかのテントが見えた。
「トア村長、古いグウィン族の民は、他種族との接触を嫌う。少し離れた位置にシロを降ろして、あとは足で物資を運ぼう」
「分かりました」
シャウナの提案に乗ったトアは、早速シロに着陸するよう伝えたのだった。
◇◇◇
ココを追って屍の森を調査していたプレストンたちオルドネス隊は、突如上空に現れた白いドラゴンに驚愕し、一旦森を抜けでた。
「ちょ、ちょっと、先輩! ドラゴンがいるなんて聞いていないんですけど!」
「それは俺も同じだ。……クソっ! 一体あのドラゴンは――」
「ガウガウ!」
熊の獣人族であるガルドは、何かを訴えるかのようにプレストンの上着を引っ張る。
「あん? どうした、ガルド」
「恐らく……あのドラゴンに何かが乗っていたと言いたいんじゃないでしょうか」
「? どうして分かる」
「さっきのドラゴン……荷物運搬用の装備が施されていました」
「荷物運搬? ドラゴンでか?」
「もしかしたら……あの一族に荷物を届けるのかもしれません」
「!? ……可能性はゼロじゃないな」
プレストンはひとつ息を吐いてから、ミリアたちに告げる。
「あのドラゴンが飛んでいった方向へ行く。……いいな、みんな。この任務が失敗に終われば――俺たちに明日はないぞ」
「分かっていますよ」
「はい」
「ガウッ!」
崖っぷちに立たされているオルドネス隊。
彼らの希望をつなぐ鍵は――グウィン族にあった。
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