ザ・サンダーボルト

第1話 闇を知る者



  2005年


メキシコのこじんまりとした事務所の一室に数人の男達がいた。一人は葉巻を咥えて椅子に座り執務机に向き合って、それ以外は立っている。服装は概ねスーツで統一されており腰に拳銃を下げている。


 「てめぇら、奴を始末したか?」

 「はいボス、ありったけの岩砕爆弾で奴のいたマンションごと吹き飛ばしました」


それを聞いてボスと呼ばれた男は椅子から立ち上がって葉巻を口からとり青い空と小汚ない壁のマンションが見える外の景色を眺める。


 「奴の死体を確認したのか?」

 「いえ、まだ確認は.....」 

 「死体が見つかってないという事は奴が生きてるかもしれないということだ!」


ボスは振り替えって報告をしていた男に怒声向かってそう言った、ボスは再び外の景色を眺めた。男は何故ボスがそこまで奴と呼ばれる存在を恐れているのか理解ができなかった。


 「ボス、2トンもの爆弾の爆発に巻き込まれて生きている人間が居る筈ないですよ」


男はそう言うがボスは返事をしない、それを見て諦めたのか部屋を出ようとしたその時、何かが何かに刺さる音が聞こえて振り返った。


 「ボス?どうかしましたか」


男は呼び掛けに返事どころか動きすらないのボスを心配して肩に手を掛けた。

するとボスは後ろに倒れた、顔の左側に矢が刺さっていた。


 「なっ!......おい...」


男は言いきる前にナイフで首を切り裂かれた。男と思われるナイフの主はフードを被り左手に弓を持っているという特徴からこの者がボスに矢を当てたと明確に理解できる。フードマンは弓を畳んで背中の矢筒のスペースにしまった。


 「どうだっ......誰だおま.....」


フードマンは扉の近くにいた男の首を180度回転させて廊下を進む、その姿を見てボスの部下のギャングは殺そうとする。

彼は自分を殺そうと掛かってきた者を格闘術やナイフなどを駆使してことごとく倒していった。


 「何者だ、おま.....ぐはぁ!」


フードマンは腰の鞘から引き抜いた打刀で敵を切り裂いてゆき最後の一人が倒れる。

彼が後ろを振り向けば首を切り裂かれて血を流す死体、紐で首を絞めて宙吊りにした死体、胴体に長い傷が走った死体が並んでいた。

彼は事務所から出て事前に仕掛けておいた爆弾の起爆スイッチを腰から取り、スイッチを押した。


 ドガァァァン!


そんな爆音が当たり一体に響き事務所だった建物が崩落して瓦礫となる。フードマンは近くの道に停めておいた車に乗って載せてあるカセットプレイヤーをかけてから車を発進させてその場を離れた。


 「こちらオブザーバー、目標がポイントD7を爆破、移動を開始した。確認できてるか?」

 《スカイアイよりオブザーバーへ、確認できてる、目標はポイントA1へ向かっていると思われる。》

 「了解したスカイアイ、ポイントA1に先回りして張り込みをする」

 《了解、但し目標には悟られるな》


建物の影で一人の人物がそう通信機で報告をしていた。その男の肩にはマルコシアスをかたどった紋章が入ったワッペンが着いていた。





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