the・outer world

新高弥三郎

プロローグ


 『世界は我々の知るよりよりも広い。』


そう描かれた本がこの世界の書店にある。言葉を聞けば確かにそうかもしれない、世界は我々が知るよりも広く、我々が知らない隣人がいるのかもしれない。

だからこそ人は知らない世界を知りたがる。だからこそ人は紙やデータの上に新たな世界を作り出す。

だからこそ人は旅をする。

だがそれでも知らない世界、知れない世界が存在する。それでも人はそこに夢や希望を描く。

この世界は誰も知らない筈の1つかもしれない。


 ・・・・・・


  1989年


 「ふざけた事を言うのも大概にしろ!」


広い一室にその怒声が響く、声の主は年齢10代半ばか後半程の少女。彼女は研究者なのかカジュアルな服の上から白衣を着て、白衣の胸には『アメリア・E・カール』と描かれたネームワッペンが縫い付けられている。


 「カール博士、そうはいっても君とオブライエンがかつて研究していた強化兵士計画、及びその計画の中核を成す血清。その製造に関する知識やレシピは君が持っている。そしてそれが今の我々には必要なのだよ」

 「ふざけた事を、我々に必要だと?。貴様は口が上手いんだな。」


アメリアが男の言葉を聞いてそう言った直後白衣のポケットから小さな円柱状の物体を取り出して男を含めた三人の手前にある机に強く置いた。


 「ローン、これを君の研究室で見つけたぞ、血清以外の私の成果も盗用する気だったんだな貴様らは」

 「カール、私は科学者だ、眠りに付いた親友を嘆いて人類史に残る程の発明を隠す気は無い。そこにいるオブライエンもそうだ。それに関して君はどうだ?怖さから自分の発明を自分一人の物にする、未だに見つからない者の戯れ言だけで研究を打ち切る....」

 「ローン、止せ」


ローンと呼ばれた男の言葉を聞いてカールはひどく苛立ちはじめ、その後に起こる事を察して近くで立っていてローンからオブライエンと呼ばれた男が発言を止めよう言葉を言った直後、彼女はローンの顔を机に打ち付けた


 「良いかこのクソ科学者、科学者は発明をオープンにし過ぎた。その結果が二度の世界大戦や今の東西冷戦なんだよ。もし私の研究が貴様らに渡ってみろ、ソビエトは直ぐに情報を掴んで軍拡する、そうなればアメリカも軍拡し負のサイクルになるんだ。」


そう言って円柱状の物体を机から取り床に叩きつけて割、更にそれを踏んでからその部屋を後にした。するとローンの近くに立っていたオブライエンはため息をついてローンを見た


 「ローン、さっきのは君が悪い。彼女の前で彼の話をするもんじゃない、私の前でもだ。アメリア・カールはこちらから手出ししなければ大丈夫だ、だがもし手出ししようものならば手がつけられなくなる。」 


彼ははそう言って再びため息をついてから胸ポケットから一枚の写真を取り出した。

それにはオブライエンとカールともう一人の人物が写っていた。



 

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