まさかの正体
人食い自販機じはんきの正体が、つくも神じゃない? だけどぼくも十勝君も、
ボクもマヨちゃんもわけが分からずに、だまってチョコをじっと見つめる。そして十勝君は、もっとよく分かっていない。何せチョコ言っている事が聞こえないのだから、ぼく等が急にだまりだして、チョコを見つめているようにしか見えないだろう。こういう時声が聞こえないって、
「おい、さっきからネコ助の事ばかり見ているけど、何かあったのか?」
「それが。チョコが言うには、この人食い
「はあ? そんなバカな。オレは食われるところだったんだぜ。ふざけてやってたわけじゃ無いって、手を入れた光太なら分かるだろ?」
それはもちろん。だけどチョコは、そんなぼく達を
「コウ君。マヨちゃんでもいいニャ。
「ええと、アレって言うと……」
ぼくもマヨちゃんも、チョコに続いて
「チョコ、何あれ?」
「シッポニャ」
「そんなこと分かってるよ。
ぼくはもちろん、今までシッポが生えた
「何だよ、何にもねーじゃねーか。まあいいや、正体が何だって、コイツが
「そんな
「バレないようにやれば良いだろ。だいたい、人をおそう
「それは、そうだけど……」
気は進まないけど、言っている事も一理あるから、強く反対することは出来ない。そしてぼくがなやんでいる間に、十勝君は
「十勝くーん、何やってるのー?」
「決まってるだろ、
いけない、これは完全におこっている。おこりすぎて今にも頭から、
「ちょっ、ちょっと待つポン!」
何ともカワイイ声が、すぐ横から聞こえてきた。もちろんマヨちゃんの声や、チョコの声じゃない。声がしたのは
今度は火事でも起こすの⁉ そう思ったけど、ケムリが立ち上っていたのはほんの数秒の事。次の
「あれ、どういう事?」
「何だ?
マヨちゃんと十勝君が、ビックリしたような声を上げる。だけどぼくは、消えてしまった
「二人とも落ち着いて。そしてちゃんと、足元を見て」
「足元っていうと……ああっ!」
マヨちゃんが思わず声を上げる。けり飛ばすつもりだった
「おい……何でこんな所に、タヌキがいるんだよ!」
そう。消えた
ぼくもマヨちゃんも、十勝君だっておどろいているけど、問題はそのタヌキの様子。まるで
「おどかしてしまって、ごめんなさいポン。ちょっとしたイタズラのつもりだったんだポン。お願いだから、けらないでポン」
かわいそうに、おびえた様子のタヌキを前にして、ぼく達は顔を見合わせる。するとチョコが、ぼくの足元にすりよってきた。
「見ての通りニャ。あの
「化かすって、昔話みたいに?
この辺りでは、近くの山から町にタヌキが下りてくることは、そうめずらしい事じゃない。だけど、人を化かすようなタヌキと会った事は無かった。そしてそれはマヨちゃんも同じだったみたいで、
「へえー、タヌキさん。君がボク達を化かしてたんだ。化けるの上手だねえ」
ニコニコと笑みをうかべながら、やさしいく声をかけるマヨちゃん。だけどタヌキはそんなマヨちゃんの事も
「ごめんなさい、もう二度としませんポン。どうかゆるしてくださいポン」
「うーん、ゆるすも何も、別にケガも無かったわけだし。そもそも君、どうしてこんなことしたの?」
「それは……」
「おい、もしかしてそいつ、何かしゃべってるのか? オレ、全然聞こえねーんだけど」
マヨちゃんとタヌキの話をじゃまするように、いら立ったような声を出した十勝君。そうか、タヌキのすがたは見えても、声は聞こえないのか。多分だけど、チョコを見る事が出来るのにしゃべってることが分からないのと、同じ原理なのだろう。あれ、でもさっきまで、タヌキが化けた
「チョコ、十勝君が
「ああ、それは多分、タヌキが意図的に化かしてみせようとしたからニャ。さっきも言ったように、本気を出したら十勝君にも、アタシの声を聞かせることができるニャ。それと同じだニャ」
なるほど、
「さあて、どうしてくれようか」
「ご、ごめんなさいポーン!」
勝ちほこったように不気味な笑みをうかべる十勝君と、今にも泣き出しそうなタヌキ。ぼくとマヨちゃんはその様子を見ながら、どっちの味方をすれば良いの? って、顔を見合わせながら考えてしまうのだった。
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