人食い自販機を調べに行こう
黒田君に行くと言った後、自分の席へともどって行く十勝君。だけどその前に、席を立ったぼくとマヨちゃんは、十勝君へと声をかけた。
「十勝君、良いの? あんな事言っちゃって」
「なんだ光太、話聞いてたのか。別に良いだろ、どうせウソか
全く信じた様子のない十勝君。だけどこれに対しマヨちゃんは、ほっぺたをふくらませて、おこり出す。
「十勝君、信じてないの? この前、ボクやコウくんが見えるってこと、分かってくれたんじゃなかったの?」
「え、いや……それとこれとは別だ。お前らはたしかに見えるかもしれねーけどさ、
十勝君はそう言うけど、そう
だけどね。だからと言って、人食い
「十勝君、ふつうは見えない人でも、何かのきっかけで見えることはあるんだよ」
「そうだよ。だいたい十勝君だって、この前かれ木に花がさくのを見たじゃない」
「………………あっ」
『しまった』と言わんばかりの
「で、でもよう。それでもまだ本当に、お化けや
「まあね。やっぱり
「だろ」
「でも、
「どうするって、そりゃ……」
言葉につまって、何も言わなくなってしまう。さっきまでは完全に信じていなかったのだから、ノープランなのも無理は無い。
少し前までの十勝君だったら、それでも笑い飛ばしていただろうけど、木の
ぼくとしては行かない方が良いんじゃないかなって思うけど、十勝君のことだから、一度行くと言った手前、そう
どうすればいいか、しばらく考えていると、となりで同じように頭をひねっていたマヨちゃんが、何か思いついたように、ポンと手をたたいた。
「よし、それじゃあボクもいっしょに、その人食い
「えっ、本当か真夜子⁉」
「うん。もしも本当だったら、一人で行くのは危ないからね。いっしょに行って、
「ああ、真夜子がそう言ってくれるなら心強いな。もちろん、オレ一人でだって別に平気なんだけど」
マヨちゃんの
十勝君の言った通り、マヨちゃんがいっしょならきっと安心だろうから。そう思っていると。
「そうだ、コウ君もいっしょに行かない?」
「えっ、ぼくも?」
今度はぼくがビックリする番だった。行くって、ぼくも? 人食い
さっきも思ったけど、やっぱり
「なあ真夜子。光太は別に、連れて行かなくても良いんじゃないのか?」
「ええー? だってコウ君、ボクと同じで、不思議な物が見えるんだよ。もし本当に何かあったら、
「けどよう。
「うっ、それは……」
「もし自販機に足が生えて追いかけてきても、オレやお前だけならにげられるかもしれねーけど、光太は走るのも
「ええと。うーん……」
聞かれてぼくは、
さっきマヨちゃんが言ってくれた、『
そう思ったぼくは、マヨちゃんに向き直って、決心して答を言う。
「やっぱり、ぼくも行くよ。
「本当、コウ君⁉」
パアッと、明るい顔になるマヨちゃん。反対に十勝君は、あわてたようにぼくに言ってくる。
「おい、本当に良いのか? 追いかけられたらどうするんだよ?」
「その時は……つかまらないようにガンバルよ」
「それでももしにげられなくて、
「うん、分かってる。もしそうなったら、ぼくの事は気にしないで良いから。二人は自分の事だけを考えてよ」
もちろんぼくだって、食べられるなんていやだけど。足を引っぱるのはもっといやだから。するとそんなぼくの話を聞いて、マヨちゃんがうれしそうに声を上げる。
「あはは、コウ君はやさしいねえ。だけど安心して。もし何かあっても、ボクがちゃんと助けるから」
「えっ? いや、ぼくは二人には、にげてもらいたいんだけど」
「そんな事できるわけ無いじゃない。
にこやかに笑みをうかべるマヨちゃん。三本の矢の話はおばあちゃんが本家ではなく、
いざとなったらにげてほしいと言うぼくの願いは、残念ながら伝わっていないけど、まあ仕方が無いか。もしもの時が起きないよう、注意すればいい、かな? やっぱりちょっと不安だけど。
「コウ君、そんな心配そうな顔しないでよ。いざとなったら、十勝君だって助けてくれるに決まってるから」
「えっ? お、おう。当り前じゃねーか」
そう言って、
さっきは助けるとはかぎらないって言っていたけど、やさしい所もあるんだなあ。思いがけないやさしい言葉に、むねが少し熱くなってきた。
けど……なんだろう? 回された手の指が
「お前何やってるんだよ? せっかくオレが、真夜子と二人で出かけるチャンスだったのに」
「ええっ、そんなこと考えてたの⁉」
どうやら十勝君は
だけどぼくがそんな事に全く気付かずに、行くなんて言っちゃったものだから、計画は台無し。顔は笑っているけど、目は全然笑ってなくて。ちょっと
一方ぼく以上に、分かっていないのはマヨちゃん。十勝君が
「うんうん、なんだかんだ言って、十勝君も良いところあるじゃない。仲良いね、二人とも」
「ま、まあな」
「う、うん」
一度はやっぱり行くのを止めようかと思ったけど、こんなにうれしそうなマヨちゃんを見ると、とてもそんな事は言えなくて。そしてどうやらそれは十勝君も同じだったみたいで、それ以上は何も言ってこなかった。
かくしてぼく達は三人で、人食い
これで全てが黒田君の
やがてチャイムが鳴って、次の
そんなわけで、人食い
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