これにて一件落着ニャ
十勝君が信じてくれたのが意外だったのは、どうやらマヨちゃんも同じだったみたいで、目を丸くしながらまじまじと十勝君を見つめ返している。
「本当だね? 本当に信じてくれるんだね?」
「くどいぞ。男に二言はねーよ」
うでを組んで、照れたようにそっぽを向く十勝君。すると、マヨちゃんが意味深な笑みをうかべた。
「うんうん、二言は無いんだね。それじゃあさ……」
「何だよ?」
「コウ君にあやまってよ」
「……は?」
何を言っているのかわからない様子で、ポカンとなる十勝君。だけどそれはぼくも同じ。ぼくにあやまるって、どういうこと?
「お前何言ってんだよ? 何でオレが光太に」
「マヨちゃん、あやまるって何を?」
あやまられる覚えなんて……ちょっとはあるけど、今の流れでどうしてそうなるの?
だけどマヨちゃんは、いたずらっぽく笑いながら答える。
「だって十勝君、学校でコウ君のことをウソつきだって言ったじゃない。信じてくれたのなら、ちがうって分かるよね。だったらあやまらなきゃ」
「あやまるって、あの時のことだったんだ。でもいいよ、ぼくは気にしてないから」
「ダメ! 悪いことをしたらちゃんとあやまらないと仲良くなれないって、おばあちゃんも言ってたし」
「別に光太と仲良くしたいなんて思わねーよ」
「ひどい!さっきは信じてくれるっていったじゃん!」
「たしかに真夜子が見えるっていうのは信じたけどさ、光太は……コイツにそんなスゲーことできるわけ無いし。あと、よく変なウソつくし」
「だからー! そのウソがウソじゃないんだってば!」
言い争ってばかりで、いっこうに話が進まない。もういいからと止めようとしたけど、二人ともヒートアップして言うこと聞いてくれないし。
どうしようかとこまっていると、このままじゃらちが明かないと思ったのか、十勝君がある事を言ってきた。
「おい光太。もし本当に見えたり声が聞こえたりするなら、
「
「そうだなあ、それじゃあ……オレの考えてることを当ててみろ」
「ええっ?」
出された
「ちょっと、そんなのズルいじゃん。ボク達は見たり聞いたりすることはできるけど、心を読むなんて出来ないよ!」
「真夜子は
そんなこと言われても。どうやら十勝君は、見える事と
そんなこまってるぼくを見ながら、十勝君はニタニタと笑う。
「どうした、できないのかよ? やっぱり光太はウソつきなんじゃねーか」
「そんなこと無いってば。十勝君、
ふたたび口ケンカを初めそうな二人。どうしよう、早く何か答えないと。でも、十勝君の考えてることなんて……いやまてよ。
マヨちゃんに
「……十勝君」
「ああ?オレが何を考えてるか、分かったのかよ?」
目をこっちに向けてきた。そんな十勝君に、ぼくは言ってやった。
「ええと。十勝君は今、ぼくがまちがえて
心が読めなくったって、無茶な事をさせて
だけど、少し考えたら
「うっ……当たってる」
どうやらこれでよかったみたい。だけど、これだけで引き下がるほどあまくはなかった。
「まてまて、今のはまぐれかもしれない。他にも何か当ててみろよ」
「ええーっ、十勝君ズルいー。男らしくなーい!」
「うるせー、三回勝負だ!」
まだ続けなきゃいけないのか。けど他に分かることなんて……一つうかんだけど、これって言って良いのかな?
「十勝君、ちょっと耳をかして」
「何だよ。大きな声で言えよ」
「いいから、ちょっとだけ」
「しょーがねーなぁ」
めんどうくさそうに、耳を近づけてくる十勝君。ぼくはマヨちゃんやチョコにも聞こえないよう、そっと言った。
「十勝君は……マヨちゃんのことが好き?」
「へ……うあああぁぁぁぁぁっ⁉」
大声を上げて飛びのく十勝君。その様子を見て、ぼくの声が聞こえていないマヨちゃんは、頭にハテナをうかべている。
「何々? 何て言ったの?」
「う、うるせー。何でもねーよ。光太、デタラメなこと言ってんじゃねーぞ」
そう言われてもこのあわてよう。しきりにマヨちゃんのことを気にしているし、間ちがっているとは思えない。
「ねえ、本当に何て言ったの?ボクにも聞かせてよ」
「アタシは何となくわかるニャ。光太君、その子に言ってやるニャ、デタラメかどうか、マヨちゃんも交ぜて話し合ってみるって」
それはずいぶんと、意地悪なやり方。
それでもチョコがこんな事を言っているって十勝君に話してみたら、案の定顔色が悪くなっていった。そして……
「わかったよ。お前がそういうの、分かるヤツだって
ついに観念して敗けを
「何だかよくわからないけど、
「分かったよ、あやまればいいんだろ。、悪かったよ」
仕方なくといった様子だったけど、ちゃんと頭を下げてあやまってくれた。
別にあやまってもらえなくてもいいって思ってたけど、信じてもらえたのは、すなおにうれしい。そして十勝君は頭を上げた後、そっと耳打ちしてきた。
「さっきのこと、真夜子には
もちろんそのつもり。言ったらなぐられちゃいそうだし、そうでなくても人の
「これにて
「こうしててって、どういう事?」
「もうすっかりおそくなってるニャ。早く帰らないと、お家の人が心配しちゃうニャ」
「「あっ!」」
ぼくとマヨちゃんの声が重なる。そういえば、今何時だっけ? 話に
そしてチョコの声が聞こえない十勝君だけは、
「何だ、急に声上げたりして?」
「もう家に帰らなきゃいけないって、チョコが言ったんだ。十勝君は、お家の人におそくなるって言ってきた?」
「あ、ヤベエ。母ちゃんにおこられちまう」
「ボクもだよ、急いで帰らないと」
自転車は、公園の入り口に止めてある。ぼく達はすでに暗くなった公園の中を走り出した。
「もおー、十勝君が帰るの邪魔したから、おそくなっちゃったんだよ」
「オレのせいかよ? 仕方ないだろ、あんな花がさくとこ見せられたら、気になって仕方がねーもん」
「わけを話すのは、明日学校ででも良かったじゃない」
たしかにマヨちゃんの言う通り。もっともその場合、十勝君は気になって今夜はねむれなかっただろうけど。それにしても……
ちょっと前までは、ぼくと同じようにマヨちゃんが見える人だって知らなかったし、十勝君がこんな風に信じてくれるようになるとも思っていなかった。写生大会からの数日で、ずいぶんと色んな事があった気がする。それらは全て、あの木の
「光太君、何を笑っているニャ?」
「……何でもないよ」
そう答えながら、チラリと後ろをふり返る。
ありがとうございます。おじいさんのおかげで、ぼくにも友達ができました。
おじいさんは消えてしまったけど、最後にもう一度、お礼の言葉をつぶやく。もうすでにそこには無い花の
木の精のおじいさんと青い花 終
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