全知を求める簒奪の求道者 其の二
静止した世界。咄嗟に発動した瞬刻思考の世界の中だ。慌てていた所為で加速倍率が相当なことになっている。落ち着け、よく考えろ。今こちらに向かっているのは光の16連撃だが、俺みたいに実際に光の速さで動いている訳じゃ無い。なら十分に対処は出来る筈だ。だが……
「範囲が広すぎる」
俺の瞬刻思考は霊力の消費はそこまでだが、脳への負荷がえげつない。特に今みたいな時間が止まって見える程の高倍率で行うのはそう長くは持たない。主観時間で1分、実時間では0.0001秒未満だ。光速移動で人を運ぶのは無理だ。移動の負荷で対象が死ぬ。今俺に出来るのは俺だけが逃げるか、目の前の16の光壁を全て潰すか。
「見捨てられかっよ」
一人で逃げるのは無しだ。英雄気取りでは無いがそう言う胸糞悪い事はしたく無い。さあ、考えろ鈴木亮一郎。この場の全員の命はお前の手の中だ。俺自身が誰かに干渉することは出来ない。つまり何かしらの方法で間接的に全員を動かすか迫る障害を取り除くかだ。《虚空門》で吸収するか? だがこの規模だと光壁一個吸収した時点で霊力が一瞬で底をついてしまう。ならばどうするか
「ステータス」
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【名前】鈴木亮一郎
【所属国家】日本
【所属宗教】神道
【職業】第一英雄
【レベル】63
【神格】4/4
【ステータスポイント】118→168→178→208
◆【霊力】
┣虚4《Ⅰ:虚空玉》《Ⅱ:亜空庫》《Ⅲ:虚空纏》《Ⅳ:虚空門》
┣霊力強化7
┗霊力操作4
▲【肉体】
┣腕力強化4
┣脚力強化4
┗肉体強化4
《耐性》
┣火傷3
┣毒4
┣麻痺2
┗恐怖4
▼【技術】
《武器》
┣剣5
┣刀8
┃┗太刀4
┣棒3
┗本1
《防具》
┣布服4
┗軽鎧4
《生産》
┣裁縫0
┣調薬1
┣調理3
┗錬金4
●【知力】
┣思考強化EX(EXCESS)━瞬刻思考
┣記憶強化0
┗知能強化0
■【固有】
┣学習3
┗直感3
【称号】
『
【
『
【
『
【
『強制開示』『無限思考』『神速読』『
【契約】
『ジークフリート』
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いつの間にか【霊力】の項目に自身が使える霊術が一覧で出る様になっていたりするが重要なのはそこじゃない。今この状況を変えられる可能性があるのはここだ。「虚4」ここに掛けるしかない。
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208→192
虚4→5《Ⅰ:虚空玉》《Ⅱ:亜空庫》《Ⅲ:虚空纏》《Ⅳ:虚空門》《Ⅴ:虚空装》
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《虚空装》:虚属性の霊力で出来た武器を錬成する。一定量の物質又はエネルギーを吸収するまで形状を保ち、吸収した分の半分を霊力に変換して還元する。
ハズレだ。強いには強いが今この状況には適していない。
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192→167
虚5→6《Ⅰ:虚空玉》《Ⅱ:亜空庫》《Ⅲ:虚空纏》《Ⅳ:虚空門》《Ⅴ:虚空装》《Ⅵ:虚空天》
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《虚空天》:自身を中心とした込めた霊力量に応じた擬似領域を展開し、その範囲内にいる自分を除いた全ての生命体から霊力を徴収し、自身に還元する。効果時間は込めた霊力に応じて変動する。
これもハズレだ。既に発動した能力は無効化出来ない。
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167→131
虚6→7《Ⅰ:虚空玉》《Ⅱ:亜空庫》《Ⅲ:虚空纏》《Ⅳ:虚空門》《Ⅴ:虚空装》《Ⅵ:虚空天》《Ⅶ:特異点》
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《特異点》:指定した空間に虚無への歪みを生み出し触れた物全てを飲み込む。指定した時間が経過するまでこの穴が消えることは無い。
「来た!」
《特異点》を眼前の光壁の中心を対象に座標指定。霊力回復薬を口に咥えて発動。
「くっ……!」
何だこの霊術あり得ない量の霊力が持っていかれるぞ!? だが、ここで止まる訳にも行かない!
「虚霊術が第七階梯……」
空間座標指定完了。霊力充填完了。残るはその名を言祝ぐのみ!
「《特異点》!」
発動と同時に霊力が枯渇し瞬刻思考が停止。等倍の時間を前に倒れながら眺める。
“ ”
音もなく、前触れも無く、ソレは其処に開いた。
飲み込まれる16の連撃。空間すら歪み重力異常によって観測される赤方偏移。これだけ間近であれば何かしらの影響が出そうな物だが一切ない。あるのかも知れないが、それすら飲み込んでいる。赤き光が輪郭となってソレが在る事を教えてくれる。触れた物全てがその瞬間から其処に無い。それだけがソレが存在する証明。霊力量にして実に俺の全霊力の三倍。霊力回復薬と咄嗟に上げた霊力強化7が無ければ霊力が枯渇状態を超えて奪われて死んでいた可能性すらある。
『何ダ、コレハ……』
二振りの聖剣が灰色の鍵となり背負う鍵束へ戻りながらラブマシーンが呟いた。
「何が起きた?」
大神さん達は理解が追いついてないだろうな。死の一撃が迫ったと思えばそれが謎の穴に吸い込まれて消えたんだからな。
「大神さん。ちょっと悪いけど暫く任せますわ」
死には至らなかったが霊力枯渇で意識だ保てない。
「鈴木!」
意識が落ちた。
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SIDE:大神照義
恐らく何かしたのだろう鈴木が意識を失った。恐らく霊力枯渇だろう。
「伊武及び無事なα班メンバーは来い。今の内に少しでも奴の体力を削るぞ!」
「「「「「おお!!」」」」」
「伊武」
「なんです?」
「畳みかけるぞ」
「うん。亮一郎さんがあそこまでやったんだ。流石に黙って見てる気は無いよ」
「頼んだぞ」
「うん」
「ここまで良いとこ無しだから俺も頑張りますよ」
「吾輩もだ!」
α班の十二神将である雑賀と猪鹿は無事だったか。攻勢に秀でた能力を持つ十二神将が三人とは心強い。
「切り札足り得るかはわからんがお前たちの《神天昇華》を発動可能状態にした。危険を感じたら迷わず使え」
「「「了解」」」
先程の連撃で奴の背に浮かぶ黒鍵は残り三つ。範囲即死攻撃もまだ十分に考えられる。出し惜しみはしていられない。
「『日輪』」
指先をクルリと回して太陽を象る紋を描き、天に擬似的な太陽を顕現させる。『日輪の権能』が発動し、それに少しでも関わりのある能力全ての霊力消費が零となった。
「行くぞ!!」
「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」
ラブマシーン目掛けて地を駆ける。
「眷属神が壱【断神】」
「《喰纏》」
「《糸操・二十指》」
「『三尺・五連』」
彼我の距離がみるみる縮む。
「来イ、【覇王】!」
「ここで消えて逝け【魔王】!」
会敵。【墨刀 筆しらべ】は既に抜き放たれている。
「『一閃・百刀』」
「《解喰・星光》」
「二十重之刃」
「《圧破封衝》!」
それぞれが今この瞬間に放てる最強の攻撃。百の斬撃が迫り、先の聖剣より放たれた一撃が返され、二十の刃が狂い咲き、圧縮された山すら崩す爆撃が超近距離で爆ぜた。
どれ一つとして対処を怠れば甚大なダメージを与える事は間違いない。だと言うのに我々の攻撃が眼前に迫ったラブマシーンは三つの顔全てが嗤っている。まるでこの状況が楽しいと言わんばかりに。
『『限・否定されし叡智の塔』』
その能力が発動すると同時にラブマシーンに迫った攻撃の内、霊術を介した物全てが消え失せた。
「これは【愚者】の!?」
『カカカカカ!』
考えてみれば当然だ。俺が【眷族】の力を使えるのだから奴が使えても何ら可笑しなことは無い。
『王ノ前デアルゾ。首ヲ垂レヨ』
『『畏気』』
その言葉が発せられると俺達は全員揃って地面に叩きつけられた。
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