開戦
「鈴木さん」
「おう、何だ?」
「今から私たちがやるのは人対人では無いだけで正真正銘戦争です」
「そうだな」
「勝たなければ人類滅亡。そんな危機下では多少の人道や倫理より勝利に近づくための効率が優先されることもあると思います」
「…そうだな」
「でも、それでも」
「言うな赤月」
「だって」
「あいつらがこれでいいって言ったんだ。お前が咎める事じゃない」
「でも…」
赤月の言わんとすることはよくわかる。より効率的に勝利を求めるのであればこれこそが最適解だ。
最短効率で最高の結果を目指すならばこれ以上の物は無いだろう。現に俺達も流されるままに支給されたソレを手に持ち準備している。それでも…
「流石にこれは無いと思うんです!」
「俺もそう思う」
俺達の眼前で繰り広げられる光景。それは…
「はいはい急いで急いで!列を止めないで!投げ入れて拍手したらさっさと抜ける!時間は待ってくれないよー!」
「【天照大御神】様の簡易お社設営完了しました!大神さんからの『
「こちら【宇迦之御魂神】様の参拝列空いてまーす!回復系の術の発動と恩恵にボーナスがかかるので前衛の皆さんにオススメでーす!」
「500円玉20枚セット巾着袋受け取ってない方いませんかー!本部前でギルドカード提示でお渡ししてまーす!」
「仏教神格のゾーンはあちらです!お間違い無いようにしてくださーい!」
「21柱目からは支給は無いので自費でお願いします!あちらで硬貨交換を行ってまーす!」
簡易的に建てられたお社に群がる冒険者の群れ。賽銭箱に500円玉を投げ込んでは手を合わせ5秒経てばまた別の簡易お社へと駆けていく。そんな光景がそこらかしこで繰り広げられている。
「ど う し て こ う な っ た」
「うちの国って神様までひっくるめてみんな頭おかしいんですか?」
「否定出来ねぇなぁ…」
なんせ創世神話からしてアレだ。
何故こんなことになったかと言えばそれはダンジョンが出現して少しした頃にまで遡る。
ある冒険者が近所の神社にお参りしてからダンジョンに入ったところ特別な状態異常が付いていたと言うのだ。その名も『簡易加護:
これを受け政府が検証を行った所、神にお参りして賽銭を入れると金額に応じた時間特別なボーナスが付くことが分かったのだ。しかもこれは同系統でなければ幾らでも重複した。それからダンジョン攻略の際に余裕があればお参りしていくのが風潮となったのである。
しかし、これは既に神の依り代となっている者には効果が無かった。要は神の加護の無い者への補填みたいなものである。
因みにこの状態異常の継続時間は1円なら10分、5円なら30分、10円なら1時間、50円なら6時間、100円なら半日、500円なら1日、1000円なら1週間、2000円なら2週間、5000円なら1月、10000円なら3か月という超ガバガバ値段設定である。効率で言えば500円玉は一番効率が悪いのだが、あまりにも大量の1円玉や5円玉を投げ入れる輩が増えて、これに各神社がぶちぎれたのである。
曰く
「神様の加護にあやかろうってんのにケチってんじゃねぇよ」と
ど正論である。
ダンジョンで得られる利益はかなりの物になる為、貧困を理由に文句を言える者も少なく、ダンジョンへ行く前にするお参りは500円玉で支払うには暗黙の了解となった。
「今回ばかりは俺達依り代の神格どもも妥協してんのか俺達でも簡易加護が受けられるのは助かるな」
「でも、ここまで簡略化したお参りにその神様たちは怒らないんですか?」
「あれ見ろよ」
俺が指さした先にいるのはこの場に降臨している神格群。
「あははは!お賽銭がこんなに!」
「ここまで信仰が入ってくるの何十年ぶりだよ!」
「近頃の子供たちは信心が薄すぎた。これぞ信仰ってものだ!」
「(゜∀゜)アヒャヒャヒャ!」
「力の高まりを、感じる…!」
お前ら本当にそれでいいのかとツッコミたい光景が広がっていた。
「えぇ…」
「本人…いや本神公認だぞ」
「この国終わりましたね」
「今なら一緒に世界も滅びるぞ」
「酷いブラックジョークだ」
兎も角俺達もそれぞれの必要とする簡易加護を貰えるお社を目指して走り出した。
~開戦15分前~
「最終確認だ」
敵とこちらを分ける謎のバリアの前に陣取った大神が声を上げる。
「昨日からの検証と情報収集を基に敵の【眷族】は何れもそれぞれタロットの大アルカナと対応していることが判明している。【ラブマシーン】が繭にこもる前に神の協力のもとに行った高位の『鑑定』」結果、奴の情報に
以上の理由から敵の強力な増援は無いものと考えて作戦を伝える。」
────────────────────
【ラブマシーン班】
主要メンバー
・【覇王】大神照義
・【十二神将・寅】衣良図劔
・【十二神将・辰】佐藤恵一郎
・【十二神将・未】間藤源治
・【十二神将・戌】伊武九郎
【α班】
主要メンバー
・【十二神将・子】雑賀妙斗
・【十二神将・亥】猪鹿蒙戸
【β班】
主要メンバー
・【十二神将・丑】冴木護
・【十二神将・卯】羽山稲葉
【γ班】
主要メンバー
・【十二神将・巳】白塚豪助
・【十二神将・午】早瀬俊
【δ班】
主要メンバー
・【十二神将・申】澤ヶ谷京香
・【十二神将・酉】鳳翔一
────────────────────
「以上のメンバーを軸として作戦を行う。みな、それぞれ指定した班のもとで最終確認を行ってくれ」
俺が配属されたのはα班。【愚者】ことUnknown Copy αの討伐を担う班であり、名前から周囲の術発動を妨げるのでは無いかと考えら、術よりも能力の方に重きを置く前衛が多めのパーティーが組まれている。
「今回指揮を任された【十二神将・子】こと雑賀妙斗です。指揮を任されたと言っても俺もド素人なんで事前に説明通達された形で動いて後は臨機応変にって感じですね。何か質問はありますか?無ければこのまま待機です」
質問は何も上がらなかった。先程までヘラヘラと笑っていた男も、緊張かはたまた恐怖で震えていた女も皆一様に黙り込んでいる。
戦前特有の緊張感に包まれた中、遂にその時は来た。
《指定時刻となりました》
《空間断絶結界解除》
《【人類】
【覇王】
【一なる日輪の覇王】大神照義
【眷属】
【十二神将・子】雑賀妙斗
【十二神将・丑】冴木護
【十二神将・寅】衣良図劔
【十二神将・卯】羽山稲葉
【十二神将・辰】佐藤恵一郎
【十二神将・巳】白塚豪助
【十二神将・午】早瀬俊
【十二神将・未】間藤源治
【十二神将・申】澤ヶ谷京香
【十二神将・酉】鳳翔一
【十二神将・戌】伊武九郎
【十二神将・亥】猪鹿蒙戸
【■■神将・■】■■■■
【ユニット】
【依り代】六十四人
【汎用】五百四十八人
※人類の参加は強制ですが神格群の参戦は自由です
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
【魔物】
【魔王】
【
【眷属】
【愚者】Unknown Copy α
【魔術師】Unknown Copy β
【女帝】Unknown Copy γ
【教皇】Unknown Copy δ
【ユニット】
【
》
《【条件】
【人類】
【勝利条件】
◆【
◇【愚者】Unknown Copy αの討伐
◇【魔術師】Unknown Copy βの討伐
◇【女帝】Unknown Copy γの討伐
◇【教皇】Unknown Copy δの討伐
【敗北条件】
◆【一なる日輪の覇王】大神照義の死亡
◆主戦力の内50%の逃亡
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
【魔物】
【勝利条件】
◆【一なる日輪の覇王】大神照義の討伐
◇【十二神将・子】雑賀妙斗の討伐
◇【十二神将・丑】冴木護の討伐
◇【十二神将・寅】衣良図劔の討伐
◇【十二神将・卯】羽山稲葉の討伐
◇【十二神将・辰】佐藤恵一郎の討伐
◇【十二神将・巳】白塚豪助の討伐
◇【十二神将・午】早瀬俊の討伐
◇【十二神将・未】間藤源治の討伐
◇【十二神将・申】澤ヶ谷京香の討伐
◇【十二神将・酉】鳳翔一の討伐
◇【十二神将・戌】伊武九郎の討伐
◇【十二神将・亥】猪鹿蒙戸の討伐
◇【■■神将・■】■■■■ の討伐
【敗北条件】
◆ ◆ 【
》
《【勝利報酬】
・【No.050 万物二分天秤 ライブラ】
・【電脳仮想領域 インターネット】
・サブ討伐対象撃破毎に報酬追加
※【人類限定】
※【魔物限定】
》
《【
────────────────────
【TIPS】
実は日本人というよりも特定の宗教に属する人間には特殊な補正が掛かる。この度の戦いでは意味は無いが、ある存在達と敵対した時、それは何物にも代え難い武器となる。
その名は…
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