閑話:英雄達の産まれた日

東京メトロ千代田線駅のダンジョンにて鈴木亮一郎が【蛮賊竜 ドスアングラス】を討伐したその瞬間とき、同時にいくつものことが起きていた。



───それは例えばダンジョンの奥深く。『一なる英雄』と同様にダンジョンボスモンスターと戦っていた男。


《レベルが上がりました。》

《【称号】『ダンジョン踏破者・Ⅰ』を獲得しました。》

《【称号】『ダンジョン単独踏破者・Ⅰ』を獲得しました。》

《【称号】『異食の勇者』を獲得しました。》

《ダンジョンソロ踏破報酬としてステータスポイントを5ポイント贈られます。》


《ワールドアナウンス》

《人類で初めて依り代以外のユニーク称号を獲得した人物が現れました。》

《これにより称号スキルが解禁されます。》

《これにより天啓システムの稼働を開始します。》


「ん?ユニーク称号?今手に入れたやつのことか?」


“くちゃくちゃ”


今も光の粒子となって消え続けているボスモンスターと一人の男がいる空間に何かを咀嚼する音が響いていた。


その男もまた東京メトロの別のダンジョンでダンジョンボスと戦っていた。

その男の得物はトライデントと呼ばれるフォークを大きくした様な形をした特徴的な武器でその刃先に炎を纏わせて戦っていた。


それだけであればただの冒険者であるのだがたった今その男に倒され光の粒子となって消えていっているボスモンスターは酷く欠けていた・・・・・


「(モグモグ)やっぱモンスターは死ぬ前に部位破壊した部位は消滅が遅いな。こうやって食べられる・・・・・。」


なんとその男はもモンスターを生きたままバラして・・・・・・・・・焼いて食べていた・・・・・・・・のだ。


《【称号】『異食の勇者』の効果により属性が《炎》から《喰》へと変化しました。》


「おっ?属性って変わるのか。でも、火が使えなくなったじゃないか…。」


“くちゃくちゃ”


ボスモンスターの肉を食べる音を響かせながら男はそんな不満を呟いていた。



───それは例えばとある国にて『唯一神』の寵愛を受けた神子。


《レベルが上がりました。》

《【称号】『聖者の神子』を獲得しました。》

《ダンジョンソロ踏破報酬としてステータスポイントを5ポイント贈られます。》


《ワールドアナウンス》

《人類で初めて依り代以外のユニーク称号を獲得した人物が現れました。》

《これにより称号スキルが解禁されます。》

《これにより天啓システムの稼働を開始します。》


「ああ主よ、我等の祈りに答え御身の声を拝聴する機会を授けていただいたことへ深く感謝を捧げます。」


その少女は特別これといった才能を持っていたわけでは無い。だが誰よりも熱心に神へと祈りを捧げ物心ついた時から一度たりとも禁を破らなかった精神は遂に未だ依り代を決めかねていた神の心を射止めた。


「この争い広がるであろう世界に御身の加護があらん事を祈ります。」



───それは例えば世界が変わる前より神秘を求めた青年。


《レベルが上がりました。》

《【称号】『始解仙』を獲得しました。》

《ダンジョンソロ踏破報酬としてステータスポイントを5ポイント贈られます。》


《ワールドアナウンス》

《人類で初めて依り代以外のユニーク称号を獲得した人物が現れました。》

《これにより称号スキルが解禁されます。》

《これにより天啓システムの稼働を開始します。》


また別の大国の山奥にて道教の真理を求め続けた少年はいつしか青年となり変わり果てたこの世界にてあり得べからざる四番目の仙人となり再臨を果たした。


「…………」


だが青年が求めた大自然への帰結へは届かず意思は希薄となり残ったのは不老不死の肉体と強大な錬丹術の二つだけであった。

薄れた意識の中で青年は考える。大自然への帰結を成すにはどうすればいいか。だが大自然への帰結において今世界にはそれを阻害する物がある。故に青年は思考した。


「…ダンジョンを滅ぼそう。あるまじき自然の摂理に反するダンジョンを滅ぼそう。」


思考の迷宮に閉ざされた青年はただ思うがままに手近な自然の摂理を乱す異物ダンジョンを目指して歩き始めた。



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SIDE:鈴木亮一郎


あの戦いからそろそろ一年が経とうとしている。

あの後もこの間も色んなことが起こり、なんやかんやあって気付けば俺は【国家認定冒険者】なんてどえらいものになっている。


あの戦いは俺の中のナニカを大きく変えた。ノリと勢いと惰性だけで会社を辞め都合の良い力を得てフワッとした気分で冒険者になった俺はもうどこにもいない。


子供の頃、俺はテレビの中の勇者ヒーローに憧れていた。でも大人になるに連れていろんなことを学び知る内にこの世の中は綺麗事だけじゃどうにもならないってことを学んだ。

そうしていつしか俺は勇者ヒーローへの憧れを捨てていた。

───だが、勇者ヒーローになんて成れなくたっていい。俺にそんな力は無いのだから。ただ自分の手の届く範囲の誰かを守り、何より自分を守る。別に好きな誰かがいるってわけでも無いのに妙な話かもしれないがあんな理不尽を見たせいか俺は手の届く誰かを守りたい。そう思う様になっていた。

ああきっとそれは勇者ヒーローの様なあり方では無いのだろう。いくら傷つき倒れても名前も知らない誰かを全員守ろうとする勇者ヒーローでは無いのだろう。

だったら俺は勇者ヒーローにならなくたっていい。


俺は、己の欲望のまま望んだ未来を勝ち取り守りたいものだけを守る。









そんな英雄ヒーローになりたいんだ。









【終焉世界英雄譚】1章:驚愕の一年目



〜終〜



現在の奉納された神器の数【1/100】


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【TIPS】

この一年で発見された神器の数は世界合計で10に満たない。

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