トライ&エラー

落ち着け。慌てたってどうにもならない。

まずはボスについて思い出せ。


メトロダンジョンにはいくつか共通の特徴がある。その一つが01のボスだけはどこも共通だということだ。ボスは【賊竜 ドスジャグラス】。取り巻きのジャグラスは8〜10匹。ボスを倒しても取り巻きは消えないし戦闘の邪魔だから先に取り巻きを倒すのが吉。ボスは大振りのモーションが多いから見極めれば避けられないほどではない。

そしてメトロダンジョン最大の特徴としてボス部屋からいつでも撤退できる。

そうだ。やばくなったら即逃げられる。今勝とうと思うな。相手を見極め少しずつ確実に殺せるようになればいい。


別に戦わなくても問題無いのだがこの時俺はボスを倒すことしか考えていなかった。


1回目


勢いよく部屋に飛び込みドスジャグラスから少し離れていた二匹に奇襲を仕掛ける。


「ジャアアアアアアッ!!」


「お前らごときじゃもう相手にならねぇよ!」


《棒》と《剣》の項目がどちらも3に上がったことで動きが少しづつ最適化されるようになってきた。


鉄棍棒を最小限の動きでジャグラスの頭にぶち当ててを吹っ飛ばし、勢そのままに左手のサバイバルナイフで別の奴の首を落とす。

最近何と無くだがこう刃を入れれば抵抗なく斬れるといったことがわかるようになってきた。


「残り八匹!」


さっき殴ったやつは当たりどころが悪かったようでピクピクしたかと思ったら光になって消えた。


「ギジャアアアアアアアッ!!!!」


ここまで動けば流石にボスに目をつけられた。


「ジャッ!」


素早い引っかき攻撃を後に下がって躱す。

カウンターは狙わずドスジャグラスの攻撃は全て躱して先にジャグラスを全滅させよう。


「ガアアアアアアッ!!」


「ちっ。」


八匹のジャグラスが次々と襲いかかってくる。


打撃、斬撃、霊術と次々に行使していくが、有効打を与える前に交互に襲いかかってダメージを出来る限り分散しやがる。


「ジャアアアアッーーー!」


何だ?ジャグラスがまるでブレスでも吐くみたいに息を吸いながら大きく仰け反って……


「ジャアアアアアアッ!!」


「うげっ!?《虚空玉》《虚空玉》《虚空玉》!」


口から勢いよく恐らく消化中のナニカの塊を吐き出しやがった。

《虚空玉》を3発打ち込んで何とか消せたがあれは威力的にも臭い的にも絶対に食らいたくないな。よく見ればお腹が少し痩せている。減った量からしてまだ2発は打ってきそうだ。


「ガアアアアアアッ!」


「っしまっ!?」


吐瀉物攻撃を躱して気を抜いた瞬間周囲のジャグラスが一気に飛びかかってきた。

瞬刻思考と『無限思考』で引き伸ばしてもどうやっても回避出来ない距離にある。


「ぐああああっ!」

右腕に噛み付かれた。

めちゃくちゃ痛い。傷口が熱い。こりゃ無理だ。のたうちまわりたい所だがそんな余裕もない。

俺はバックから非常用に用意していた煙玉を取り出し地面に叩きつけた。


“ブシューーーーー”


部屋の中が真っ白な煙で満たされる。

ジャグラス達が戸惑っている間に俺は予め確認しておいたボス部屋の入り口から脱出した。


「あーっ痛ってえなあ!!」


《虚空庫》から取り出したポーションを傷口に掛けて傷を癒す。


それから直ぐにその日は家に帰った。


〜翌日〜


「再挑戦だオラァッ!!」


昨日同様離れている二匹を潰す。

ドスジャグラスと取り巻き八匹が昨日同様に襲いかかってくる。


「昨日と同じと思うなよ!」


腰に新しくつけたホルダーから小ぶりの投擲用短剣を抜いて《虚空纏》をして投げつける。


「ギシャアッ!?」


運良く取り巻きの一匹の脳天にぶっ刺さって倒せた。

どうせ使い捨ての上に《虚空纏》を使えば斬れ味なんぞ関係ないので今朝のうちに安物の短剣を大量に購入しておいたのだ。


「おらっ、死ねっ!」


短剣乱れ打ちによって致命傷が三匹に残りも軽重症を負っている。


「ジャアアアアッーーー!」


ドスジャグラスが昨日と同様吐瀉物投擲攻撃の構えをとった。

そこで俺は近くの手頃な瀕死のジャグラスの尻尾を掴んでぶん回し勢いを付けてドスジャグラスの口目掛けて投げ飛ばす。


「ジャアアアア…アッ!?」


見事にジャグラスが喉に詰まって吐瀉物投擲を阻止してくれた。


ドスジャグラスがもがいている間に周囲のジャグラスどもを掃討しておく。


“グチャグチャ…ゴクン”


「うえっ…」


あいつ喉に詰まったジャグラスごと噛み砕いて飲み込みやがった。


「だがまあお陰で一対一だよありがとな!」


「ジャアアアアアアッ!!」


そいつ噛み付き突進はジャグラスで見飽きてんだよ!」


ジャグラスよりもよっぽど素早く突撃してくるがステータスの肉体項目の上がった俺が避けきれない程ではない。


「《虚空纏》からの三枚おろし!(ただ胴体を横に斬っただけ)」


“ギリギリギリギリ!”


「は?硬くね?」


どういうことだ?こっちは《虚空纏》を使ってるんだぞ?


「ジャアアアアッーーー!」


一瞬驚いて俺が硬直している間にドスジャグラスは向きを変えてその口から吐瀉物投擲を行う構えを…


「まっず!?」


「ジャアアアアアアッ!!」


勢いよく転がって攻撃を躱しそのまま構えを取るったその時


「ジジジャアアアアアッ!!」


ドスジャグラスが聞いたこともない叫び声を上げた。


「何だ?」


そう考えたのも一瞬のこと、その叫び声による結果は直ぐに現れた。


周囲の何もない空間に光の粒子が集まり形を成していく。そこから現れたのは


「まじかよ。」


無傷の臨戦態勢の十匹のジャグラス達であった。


「これは無理。」


俺は昨日と同様煙玉を投げて素早くボス部屋を離脱した。


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