第20話 初期町に戻りますよ。現状確認と目的設定は大事です。


―― 【はじまりの草原 完全攻略者】を達成しました ――


「終わったああああぁぁぁぁ」


 聞き慣れてきたシステムヴォイスを耳にして、思わず両手を挙げて寝っ転がった。

 燦々と照りつける太陽が眩しい。暑さも軽くだけど感じるし、草と土の匂いも仄かに嗅ぎ取れる。

 VR技術は基本脳を騙す技術だから、騙すためのインパルスさえ解析できていればこうやって五感で体験できるのだ。


「マップ広すぎなんじゃぼけぇ」


 はじめは先に進むためにマップの端まで行っただけだったのだけど、辿り着いた瞬間、思わず絶句してしまった。

 だって、「はじまりの草原」とかいっておきながら実際は「高原」だったのだ。

 そう、マップ端に辿り着いた私の視界に飛び込んできた風景は断崖絶壁と広大な大地。

 最初はその絶景に見とれていたのだけど、感動が落ち着くと思い浮かんだ感想は「開発バカじゃねぇの?」である。


「行けども行けども断崖絶壁ってそりゃ先進んでるプレイヤーも居ないわ」


 それから私はマップ埋めも兼ねて草原を歩き回った。

 絶壁から先は【プレイエリア外です】と表示されて飛び降りることもできない。

 オープンワールドって発表されてるんだから絶対に先に行けるルートがあるはずなのだ。

 サンドボックスって謳ってるんだからなんかしらのクエストクリアが条件になってるわけでもないだろう。

 いや、わかんないけど。

 サンドボックスって言っておきながらエリア解放クエストがある可能性はゼロじゃない。

 でも、それを探すのは検証勢に任せたいってのが本音だ。


「・・・・・・次、どうしよう」


 実は【プレイエリア外】と表示されない崖は3箇所ほど見つけた。

 でも、3箇所ともにプレイヤーが居たので検証してるんだろう。


「さってそろそろ動かないとスライム湧いちゃう」


 よっこいせっと立ち上がり町に向かって歩き出す。

 草原探索が終わっちゃったので初期街の観光でもしようかなっと。


「そういや、レベル幾つになったんだろ」


 と思いステータスを開けば、lv11の文字が。

 このゲーム、lv10差あると経験値が入らないらしく(コミュニティに書いてあった)、はじまりの草原でレベリングはlv15までしかできない。

 そしてGMさんが言っていたようにlv10以降の必要経験値は文字通り桁が違った。

 私はたぶん戦歴報酬の実績解除の為にフュージョンスライム狩りをしたので11まであがってるんだろう。

 ということで、これからエネミー討伐でレベリングするのは恐ろしく効率が悪い。

 それだったらクエスト達成報酬と戦歴報酬の経験値で稼いだ方がいい。


「つうことで、町の観光がてらクエスト探すぞー!」


 わざわざ声出して目的はっきりさせるの大事。

 VRゲームは特に移動が長いから目的地着いた時「何やるんだったっけ?」ってなったりするからね。


「きゅい!」


「あぁ。ごめんね。大きな声でびっくりしたね。じゃぁ死ね」


 エンカウントした兎さんを膾斬りにして私は初期街へと還った。

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