騎士様と本気の果たし合いをしましょう

第19話 とある運営スタッフさん達の会話。あるいは判りやすい伏線。


「せんぱ~い。このコードなんです~?」


「ん~? どれだー」


 都内某所。

 SteamMagiTechnikaの運営チーム内での一幕である。


「これですよ」


 そう言ってウィンドウを空中に表示して先輩に見せる後輩くん。

 お察しの通り、VR加速空間でお仕事中である。


「あぁこれか」


 先輩はプログラミングの知識が相当あるのか、見た瞬間はしっているコードが何か理解したようだった。

 運営スタッフは開発スタッフと違ってプログラミング技能はあると嬉しいなぁという程度だが、この先輩は有能なスタッフなのだろう。


「翻訳プログラムコードだな。何人かご招待しただろう?」


 後輩くんは言われて「あぁそういわれれば」と思い出したようだった。


「そっかぁ、リアルタイム翻訳って今はこんなに精度高いんですねぇ」


 後輩くんは件のユーザーのプレイを見ながらそんな感想をもらした。


「お前はまたユーザーのプレイを見ていたのか」


 先輩は呆れた声音でそんなことを言った。

 というのも、この後輩くん、広報が主業務である。ゲーム内でなにかするお仕事ではない。


「いや、だって、ユーザーのプレイPVが一番客寄せになるんですよ」


「まぁ、そうだな。というか、お前はそれが得意だからこの業界にずっといられるわけだしな」


 そうなのだ。この後輩くん、プログラミング知識はないが広報をやらせれば凄く優秀で有能なのだ。

 客に何を魅せればいいのかよくわかっていると言える。


「で、今回目を付けたのは誰だ?」


「この方ッス。イメージ完璧な騎士様! 凄くないですか!? 完全初期状態でステータスの恩恵なしにこの動き。そしてゲーム内での言動振る舞い。ジェントルマンなナイト様とか宣伝力充分です!」


「ちゃんと許可取れよ」


 先輩の物言いに後輩くんはムッとした。


「当たり前です。そういうのちゃんとできるか否かで仕事の精度が変わるんですから!」


 やはり後輩くんは有能なのだ。すべきことをしっかりと把握している。


「この方、リアルでもジェントルマンなんですかねぇ」


 そんなことを呟くものだから先輩はさらっと件のプレイヤーのIDを調べた。そして納得した。


「大丈夫だろう。この御方はちゃんと準備をして提示すればご協力頂けるはずだ」


「知ってるんすか?」


「あぁ、友人のプログラマがご招待した方だ」


 そして、その後に続いた言葉に後輩くんはマジカって顔をしたのだ。




 ――なにせ、その御方は、本職。軍所属の騎士様だぞ。

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