第21話 NPCに好感度があるようです。街はどことなくすち~むぱんく?
「無事の帰還を祝福するぞ渡り人。我らの町【デモクラ】へ」
何気ない一言だけど、こういう言葉を掛けてくれるようになってるのとっても嬉しいしホッコリする。
場所は初期街南門。
守衛さんと顔見知りになると出入りで一言くれる仕様になっているらしく、私はこのゲームでは極力NPCともお喋りするぞっと決意したのです。
「ただいま戻りました。ヤータマさんお疲れ様です」
私の返事ににこやか笑顔で頷いてくれるヤータマさんは虎のセリアンで妻子持ち。
奥さんと子供のことを溺愛していて、シッポをブンブン振りながら惚気話を延々しちゃうカワイイパパさん。
情報収集がてら話しかけたら小一時間惚気話を聞かされたので無駄にヤータマさんの奥さんに詳しくなってしまった。
惚気話が終わったときの私の感想は「NPC担当のAI気合い入ってんな」というものだった。
いやぁね、AIにもなんか個性みたいなのがある感じがあって、このゲームのAIはなんか設定厨?な気がしている。
まぁ、それは置いておくとして。
「ヤータマさん兎肉いります?」
尻尾ブンブンしてるので兎肉は喜ばれた御様子。
「差し入れはいつでも歓迎だぞ! そっちの詰め所カウンターに置いてくれ」
そう言ってヤータマさんはすぐ横の出窓っぽい所を指さした。
私は苦笑しながらそそくさとそちらに移動する。
なんでドロップ品のお肉を売りに行かないで寄付しようとしているかと言えば。
「エコさん町の貢献度や町民の好感度上げてます?」
「え? なにそれ詳しく」
「マスクデータですけど、町と町民にそれぞれ数値があって、それの増減で態度が変わるらしいですよ?」
こういうやりとりをツネオミ氏としたから。
できるなら町の人達と仲良くしたいし、好感度が高くないと出現しないクエストもありそうという打算。
と、いうことでまず手始めに町の防衛を担っている方々と仲良くなろう計画を始動したのでした~。
「すいませーん。さしいれでーす」
「はーい。ちょっとお待ちをー」
奥から女性の声が響いてきた。
私は言われた通りに待つ。・・・・・・。ぼ~~~。
そういえば、この街は信じられないぐらい堅牢だったりする。
例えば、町を囲う外壁は総石造なのだけど、只の壁ではなくて砦として設計されている。城郭といえばいいのだろうか?
厚みがあって、中でヒトが暮らせるスペースがあって、戦えるだけの設備が整っている。
だから単に門を抜けると言っても10メートルぐらいの通路を歩く事になるし、その通路には約10人の守衛が立っていて不法侵入などまずできない。
それに、ヤータマさんが言ったように通路脇には詰め所が設置されていて、外壁砦に繋がっているらしいから何か起こればワラワラと砦勤務の兵士さんが出てくるはずだ。
そうそう、ついでに。
この外壁門、上げ下げ式で鎖を引いて木製のでっかい扉を持ち上げるのだけど、蒸気機関を採用していて、とってもスチームパンクな光景が見れるらしい。
門扉は基本開いているのだけど、北門だけは夜間閉まるらしく、門上部から真っ白い蒸気が吹き上がり、ギャリギャリ歯車が廻って門が閉じていく様は圧巻だったと雑談スレッドに書いてあった。
SSも貼られてて、マジかっこよかった。
夜になるときに絶対に見に行こうって決めたよね。
「お待たせしましたー」
詰め所の窓からにゅっと眼鏡を掛けた猫顔のセリアンが顔を出した。
身を乗り出して出窓の遙か下方にいる最低身長の私を見下ろしている。
窓枠に置かれたご立派なお乳様がちょっと邪魔そう。
「あ、今日はご夫婦でお仕事なんですね」
そう、この方こそヤータマさんの奥さんであるカジナーさん。
「はい。いつも旦那様が煩くてすみません」
そういって苦笑するカジナーさんはどことなくかわいらしい雰囲気をまとった女性で、見ていてほっこりする。
「いえいえ。色々教えて頂けて助かってます」
「そう言って頂けると、ありがたいですわ。それで差し入れでしたかしら?」
「はい。兎肉10キロぐらいいかがです?」
「まぁそんなに!? ちっちゃいのに働き者で凄いわねぇ。」
ちっちゃいのは関係なくない? と思わないでもないのだけど。
さて、兎肉10キロ。インベントリ表記だと100個である。
こう表記すると案外少なく思えるから不思議だ。
「犬肉は・・・・・・」
そう言った途端、カジナーさんは困った顔をした。
なんだろう。困らせたいわけではないのだけど。
「犬肉はあんまりなんです?」
「そうねぇ。独特な臭みがイヤって人が多いわね」
むむむ。神は細部に宿ると言うけれど、こんな細かい設定要る?
でも、まぁ、しかたない。
今回は好感度&貢献度上げだし、喜ばれることだけやらないと。
「じゃぁ兎肉だけどうぞー」
「ありがとうね。そうだ。あなたは料理はする?」
ん? 早速なんかのトリガー引いたかな?
「いえ? 興味はありますけど」
「3番通りで料理人のバイト探してる所があるわよ。そこの料理店なら犬肉をおいしく調理できるし」
おぉ、このゲーム、料理そうやって学ぶんだ。
「近いうちに行ってみますね。じゃぁまた」
「えぇまたね」
手を振って別れて、とっとこ門を抜ける。
とりあえず、暗くなる前に北門近くに行こうかな。
北地区の探索も全然してないし、レッツゴー!
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